「子供がもうすぐ成人するので生前贈与を考えているけど、税金面が気になる」
「生前贈与より相続時までなにもしない方がお得?」
相続や贈与ってなんだかややこしそうでつい後回しにしがちですよね。
しかしある一定以上の財産があり、子供が成人年齢を越えているなどの条件を満たせば特別控除などの税制優遇があるため、生前贈与のほうが有利に働く場合があります。
そして相続の対象となる財産が多いと残された家族が揉める原因にもなりかねません。
私は仕事柄、相続をする年齢層の方と接することが多いのですが、財産が多いために兄弟や親せき間で揉めている話をよく耳にします。
そんな問題を回避するためにも「生前贈与はするべき!」といえます。ただ一部の人はなにもせずに相続のタイミングまで待った方がよいこともあります。
では実際どのような人が生前贈与をすべきなのか、相続との違いや生前贈与をする際の注意点についても徹底解説していきます。
目次
相続と贈与の違いとは
まず「相続」と「贈与」の違いについて説明していきます。
ポイントは大きく4つ。〈財産を渡すタイミング〉〈条件〉〈相手〉〈基礎控除額〉です。
相続とは人が亡くなったときに発生するものです。対して贈与は贈与者が亡くなる前に遺産の一部を特定の人に渡すことをいい、双方の合意のもとに発生・成立します。受け手が知らない状況で贈与は起こりえません。
そして相続や贈与をおこなう相手ですが、贈与は親族以外の他人に対しても可能な一方、相続の対象者は基本的に配偶者や子供、孫、兄弟など法律上親族にあたる人になります。
さらに大きな違いはその控除額です。贈与税は相続税に比べて、税率が高く設定されています。
以上を分かりやすく表にまとめていますので、参考にしてみてください。
相続 | 贈与 | |
財産を渡すタイミング | 被相続人が亡くなったとき | 贈与者が生存しているとき ※1 |
条件 | 人が亡くなった時点で必ず発生する ※2 | 双方の合意のもと発生・成立する |
財産を渡せる相手 | 基本的には法律の定めに従い、法定相続人が対象となる ※2 | 赤の他人でもOK |
基礎控除 | 3000万円+600万円×法定相続人の数 ※3 | 110万円(1年間) ※4 |
※1 死因贈与(自分がなくなったらこの財産をあげるという約束)の場合、財産の受け渡しは死後になり、その際には贈与税ではなく、相続税がかかります。
※2 財産放棄の意思表示により相続を放棄することや遺言によって他人に相続させることも可能です
※3 その他配偶者の税額控除など数種類の税額控除があります。
※4 その他配偶者控除など直系尊属への税制優遇があります。
次の項では、自分は贈与対策をするべきなのか?そして相続や贈与に関係する税制優遇などをくわしく解説していきます。
相続・贈与対策をすべき人と対策の方法
前項では相続と贈与の違いについて説明しましたが、この項では「相続や贈与の対策を自分はするべきか否か」。そして相続や贈与対策の仕方について、分かりやすく説明していきます。
相続・贈与対策をすべき人たちとは
簡単にまとめると下記に当てはまる人は生前贈与を検討すべきです。そうでない人は相続のタイミングを待つのがよいといえるでしょう。
・相続対象になる財産が相続税の基礎控除以上にある人
・早くに財産を渡したい直系尊属がいる人
・贈与税の税制優遇を受けるほうがお得になる人
◆相続対象になる財産が相続税の基礎控除以上にある人
たとえば、法定相続人が3人いるとすると、相続税の基礎控除額は3000万円+600万円×3人で4800万円です。
これ以上の財産がある人は贈与を検討しても良いかもしれません。
とはいえ、相続にはほかにも大変お得な税制優遇がなされています。
たとえば、被相続人の配偶者が相続する場合には「配偶者の税額控除軽減」として1億6000万円か配偶者の法定相続分が控除され、残った財産金額に対して相続税が課税されます。
早くに財産を譲り渡す必要がなければ、上記のように相続のほうが税制上良い場合もあります。
◆早くに財産を渡したい直系尊属がいる人
若いうちは金銭面に余裕もなく、しかし子育てや勉強などお金が必要な場面は多いです。
そのような子や孫がいるならば、上記に説明した贈与税の特例制度である非課税措置を利用し、贈与することを検討してみてはいかがでしょうか?
相続や贈与の非課税措置については次の項で詳しく説明していきます。
◆贈与税の税制優遇を受けるほうがお得になる人
相続税と同じく、贈与税にも税制優遇が設けられています。
直系尊属(祖父母や父母)から子や孫に対して贈与する場合に適応される制度で、教育資金や住宅取得等資金、結婚・子育て資金の贈与に非課税措置が適応されます。
詳しくは次の項をご覧ください。
相続・贈与対策に使える様々な非課税措置
前項までに説明した内容のものもありますが、この項から読んでくださった方のためにまとめておきます。
相続や贈与の対策をおこなうにはそれぞれの非課税措置を知っておくことが非常に重要です。
◆相続
- 生命保険・死亡退職金に対する非課税措置
500万円×法定相続人の数
- 遺産に係る基礎控除
3,000万円×法定相続人の数
- 配偶者の税額軽減
1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分
そのほかにも未成年者控除や障がい者控除など様々な控除があります。
◆贈与
- 暦年課税
110万円の基礎控除(年間)
- 相続時精算課税制度
60歳以上の祖父母もしくは父母が18歳以上の子や孫に2,500万円以下の財産贈与を行う場合非課税になり、代わりに相続時にその贈与した金額に対して相続税が課税されます。※①の暦年課税との選択制
詳細は、No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁 (nta.go.jp)
- 贈与税の配偶者控除
20年以上の婚姻歴がある場合、基礎控除とは別に2,000万円まで居住用不動産もしくはその取得のための資金が非課税になります。
詳細は、No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁 (nta.go.jp)
- 直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税制度
20歳以上の子や孫が対象で、贈与を受けた年の所得が2,000万円以下の人に限定。
適用住宅は50㎡以上240㎡以下や非課税限度額は住宅の仕様によって500万円から1,500万円とそれぞれ定められています。詳細は、No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁 (nta.go.jp)
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
30歳未満の子や孫が対象で受贈者1人につき1,500万円まで非課税なります。受贈者の前年収入が1,000万円以下で、贈与者は直系尊属に限定されます。学校の授業料以外にも通学費や留学渡航費に利用してもOK。
詳細は、No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁 (nta.go.jp)
- 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
受贈者は18歳以上50歳未満で前年の収入が1,000万円以下の人に限ります。贈与者は直系尊属です。
非課税の限度額は受贈者1人つき1,000万円まで、贈与された資金は結婚式や引っ越し、不妊治療にも使えます。
詳細は、No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁 (nta.go.jp)
相続や贈与対策をする際に注意すべきこと
贈与税の基礎控除
毎年110万円までの贈与は非課税となりますが、毎年同タイミング同金額を振り込んでいると相続税の節税対策とみなされ、税務署から否認され追徴課税を課される危険性があります。
・金額は変える
・同じ時期に振り込まない
・あえて110万円を超える振り込みをして贈与税を支払う
・毎回「贈与契約書」を作成する
などの対策が必要です。
贈与はかならず銀行振り込みで!
現金手渡しをすればバレないという考えは危険です。
銀行の出入金について税務署は把握しており、不正出金と疑いがかかれば捜査がはいりすぐに発覚します。
暦年課税で贈与する場合もそうですが、なるべく同じ銀行口座を利用し不正を疑われることのないようにしましょう。
直系尊属の贈与は目的以外や受贈者以外の利用は不可!
たとえば、教育資金目的で孫の口座に振り込んだのにそのお金を親が使用したり、その資金で家をリフォームしたりすることは不正贈与とみなされます。
相続・贈与を相談できるプロや専門機関とは?
相続も贈与も税制優遇を利用する場合、併用が可能なものと不可能なもの、そして上記で説明したようにやり方によっては税務署から相続税を節税するための贈与とみなされ通常の贈与税を加算されるなど、追徴課税されることになりかねません。さらに贈与は控除の種類によって税務署に申告が必要なものと不要なものがあり、煩雑です。
相続や贈与を専門としているプロや専門家の力を借りることで安心して相続や贈与の準備を進めていくことができます。
弁護士や行政書士など相続や贈与に詳しい専門家はたくさんいますが、おすすめは税理士への相談です。税法は毎年変更があり、相続や贈与も例外ではありません。そのため専門的におこなっていて最新の税法に詳しい税理士に頼るのが安心だといえます。
しかし税理士に頼むと費用面が不安…というならば、信託銀行やファイナンシャルプランナーへ相談という選択肢もありでしょう。
また税務署や公的機関では定期的に無料で弁護士や税理士に相続や贈与の相談ができる「無料相談会」をおこなっています。
そのような機会を上手に活用していくのも良い方法です。
まとめ
今回は相続や贈与の違いや相続や贈与対策をすべき人とその対策の仕方について説明しました。
相続も贈与も様々な税制優遇などが用意されているので、どちらの制度を使う方が自分にとってお得になるのかを調べる必要があります。
そして節税のメリットを最大に受ける場合は期間を有することもあるので、対策は早めに始めるに越したことはありません。
まずは専門家に相談し、財産の把握と自分が使える税制優遇を確認してみましょう。
今回の内容は2022年5月現在の法律を基に作成しています。最新の法律や詳細については国税庁の相続や贈与に関するサイトをご確認ください。
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