建設業界では、建築需要が加速するといわれている反面、さまざまな課題が存在します。
人材不足や長時間労働の常態化といった問題は建設業界が長年抱えている課題であり、
早急な対策が必要です。
本記事では、建設業界を取り巻く環境や課題とその解説策について解説していきます。
目次
建設業界を取り巻く環境と、見通しについて
建設業界では、今後の建築需要増加が見込まれています。
大阪万博やリニア中央新幹線といった大規模プロジェクトや、
建築物の老朽化対策が見込まれていることから建築需要が加速傾向にあるといえるでしょう。
今後の建築需要は加速する
今後の建築需要は加速するといわれています。
オリンピックが終わり、人口も減少傾向にあるといった不安材料があるのは確かです。
しかし、大規模な建築プロジェクトや建築物の老朽化への対策のほかにも、
地方創生目的の建築プロジェクトも見込まれていることから建築需要は加速傾向にあるといえるでしょう。
予定されている建築プロジェクトとしては、2025年開催予定の大阪万博や2027年開業予定のリニア中央新幹線があります。
また、「特定複合観光施設区域整備法案(カジノ実施法案)」が成立したことから、
統合型リゾート地や宿泊施設、レストラン、スポーツ施設といった建築需要が見込まれるでしょう。
<h3>新型コロナウイルス感染症による影響</h3>
新型コロナウイルス感染症は建設業界にも打撃を与えました。新型コロナウイルス感染症の影響により、宿泊業や飲食業の売上が減少。それにより、建築現場では打ち合わせや工事自体が中止になるなど、受注に大きな影響がありました。
しかし、コロナ禍は徐々に収束しています。影響は限定的です。
建設業界の抱える課題 4選
建設業界が抱える課題は人材不足や労働者の処遇、業務効率化の遅れが挙げられます。
労働者の処遇改善や業務効率化も課題になっており、
これらの問題が長時間労働の常態化につながっていることは否定できません。
ここでは、建設業界の抱える課題について解説していきます。
課題① 高齢化と人手不足による人材不足
建設業界の課題として、高齢化と人手不足による人材不足が挙げられます。
国土交通省の調査では、求職者が減少していることが読み取れるでしょう。
1年目の離職率が高い結果となっていることも問題です。
また、建設業界では60歳以上の技術者の割合が全体の60%を占めています。
29歳以下の割合は約10%となっており、若年労働者を定着させるための取り組みが課題といえるでしょう。
60歳以上の技術者の多さは10年後には技術者たちがいなくなることを意味しています。
今後の建設需要の増加に対応するためにも、
中途採用や女性の雇用促進といった対策も必要といえるでしょう。
課題② 労働者の処遇
労働者の処遇も建設業界の課題に挙げられます。
国土交通省の調査によると、給与については建設業界としては増加傾向にあるのは確かです。
しかし、製造業と比較すると建設業は見劣りします。
社会保険の加入率も問題です。
2018年の社会保険加入率は97%と問題ないようにもみえます。
しかし、そのなかでも下請けの数が増えるにつれて社会保険加入率は下がっているのです。
元請の加入率98.4%に対し、3次下請けは90.5%と8%も差があります。
建設業界では5次下請けまで存在するケースもあり、
5次下請けの社会保険加入率はさらに低いであろうことが予想できるでしょう。
課題③ 業務効率化が遅れている
業務効率化の遅れも問題です。
建設業界は天候の影響を受けやすいことや多重請負構造、ノウハウ化が難いといった理由から、
業務効率化が難しいといわれています。
そういった問題を解決するためにはデジタル化やIT化に対応する必要がありますが、
その対応が遅れているのが現実です。
建設業界ではアナログ文化が根付いており、対面での打ち合わせや口頭での日程調整といった慣習が多く残っています。
業務効率化を進めるためにも、ITを活用したコミュニケーションの効率化や業務のデジタル化といった動きが必要です。
課題④ 長時間労働の常態化
長時間労働の常態化は、建設業界に長く根付いた課題です。
建設業界の労働時間は長い傾向にあり、国土交通省「建設業における働き方改革」で、
建設業の年間実労働時間は製造業や調査産業計に対し100時間以上も超過している結果が出ています。
週休2日を確保している企業は10%以下です。
建設工事全体では約5%が4週4休以下で就業している状況です。
このことからも、長時間労働が常態化していることがわかるでしょう。
人材不足という問題があるなか単純に労働時間を減らした場合、
工期が遅れ売上減少につながってしまいます。
労働時間を削減したうえで売上を確保するためにも、業務効率化が求められているというわけです。
建設業界の課題 解決策 3選
建設業界が抱える課題である人材不足への対策には労働環境の整備が必要です。
キャリア支援の仕組みが整備されることで建設技術者の処遇が向上し、
若年層の人材や外国人労働者の確保にもつながるでしょう。
長時間労働の常態化への対策には、時間外労働の規制強化がカギとなります。
労働時間の上限規制や時間外労働の割増賃金率の引き上げ、適正な工期設定等のためのガイドラインといった規制により、長時間労働の抑制につなげるというわけです。
長時間労働を削減するには規制だけでなく業務効率化への取り組みが必要になります。
業務効率化にはITツールの導入が有効です。
ITツールの導入により、図面や施工管理の確認といった現場の業務効率化だけでなく、
オフィスワーク業務の効率化にも効果があります。
解決法① 労働環境の整備で人材確保
建設業界が抱える人材不足の対策には、労働環境の整備が必要です。
週休2日制や残業時間の抑制で労働時間を削減するだけでなく、
研修や教育の充実や女性従業員の登用といった取り組みにより、働きやすい環境を構築しましょう。
「建設キャリアアップシステム」に登録すれば、
個人情報から職務履歴や研修受講履歴、保有資格、社会保険加入情報などの情報が紐づけられます。
このシステムにより適切な評価や賃金の向上、社会保険の加入推進といった建設技術者のキャリア支援ができるでしょう。
キャリア支援の仕組みが整備されることで建設技術者の処遇が向上します。
若年層の人材や外国人労働者の確保にもつながるでしょう。
処遇を改善しても長時間労働により、離職されるリスクはあります。
人材確保には長時間労働への対策が欠かせないといえるでしょう。
解決法② 時間外労働の規制強化
建設業界が抱える長時間労働の常態化への対策には、時間外労働の規制強化がカギとなります。
2024年4月から適用となる「労働時間の上限規制」により、
「月45時間、年360時間」の残業時間上限が罰則付きで規定されました。
2023年4月から、60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられます。
月60時間を超える時間外労働をした場合、人件費が増加することから
長時間労働の抑制につながるというわけです。
「適正な工期設定等のためのガイドライン」を見直し、適正な工期設定を推進しています。
発注者と受注者が協力しあうことで短納期の対応に追われる受発注を抑制し、
労働時間を抑制するということです。
規制をしただけでは簡単に労働時間を削減することはできません。
具体的な業務効率化に対する取り組みが必要になるでしょう。
解決法③ ITツールの導入で業務改善
建設業界が抱える業務効率化対策には、ITツールの導入が有効です。
建設業界では事務作業のデジタル化はもちろん、
タブレットにより図面や施工管理の確認ができれば、スムーズに業務が進みます。
ITツールの導入でテレワークへの移行も可能です。
建設業では工事現場だけでなく受発注業務や設計、施工管理といったオフィスワークも存在します。
クラウドストレージやVPNによるデータ共有やチャットツールやWeb会議ツールを導入すれば、
遠隔地での業務も可能です。
建設業界が抱える課題を理解し改善に取り組もう
建設業界が抱える課題には、人材不足や労働者の処遇、業務効率化の遅れがあります。労働者の処遇改善や業務効率化も課題になっており、これらの問題が長時間労働の常態化につながっているといえるでしょう。
人材不足への対策には労働環境の整備が必要です。
キャリア支援の仕組みが整備されることで建設技術者の処遇が向上し、
若年層の人材や外国人労働者の確保にもつながります。
労働時間の上限規制や時間外労働の割増賃金率の引き上げ、
適正な工期設定等のためのガイドラインといった規制により長時間労働の抑制につながるでしょう。
建設業界が抱える課題を理解し、改善に取り組むことで、建設業界の発展につなげましょう。
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