競争激化や長引くコロナ禍、デフレなどにより美容業界を取り巻く環境は非常に厳しいといえます。
あの手この手と新たな策を打ち出してみるも、
売上には響かずどうしたらいいのか悩んでいるサロンオーナーは多いのではないでしょうか?
私自身の経営者としての経験や同じ美容業界で経営者から集めた情報も交えて、美容業界の現状と課題、そして問題解決のため何をすべきなのか?を解説していきます。
目次
美容業界の現状
コロナの影響を受けてお店を閉めてしまう人も多くいる中で、新規オープンする人もいる美容業界。
2022年現在、美容業界の店舗数や廃業数はどうなのかまずは確認してみましょう。
美容業種の店舗数
厚生労働省が行った調査「令和2年度衛生行政報告書例 生活衛生関係」によると2020年(令和2年)の年度末において、美容施設は257,890店舗です。
美容業界の店舗数は増え続けています。
一方で理容施設は減少傾向にあり、これらから見えてくることは男性が理容室ではなく、美容室を利用するようになったことや顔そりではなくひげ脱毛などエステを利用するようになったことが要因として考えられます。
では全体の店舗数が増えている結果を踏まえて、廃業をするお店はどのくらいあるのでしょうか?
美容業種の廃業数
株式会社帝国データバンクの調査結果をもとにみていきます。
理美容業者の倒産動向調査(2019年度)によると2019年度の理美容業の倒産件数は180件です。
そのうち美容業に限定すると162件となっています。
負債規模別でみると負債額5000万円未満が9割を占めることから
小規模の施設が廃業に追い込まれている現状がみえてきます。
次に美容業界の課題と問題点を洗い出していきましょう。
美容業界の課題と問題点 3選
日本政策金融公庫が公表した調査結果によると美容業界の問題点は、調査に回答した対象者のうち74.1%が「顧客数の減少」、27.8%が「客単価の減少」そして12.8%が「従業員の確保」と答えています。※2つまで複数回答可
参考:日本政策金融公庫 生活衛生関係営業の景気そう高騰調査結果11ページ
そして現場のリアルな声として「経営者の高齢化」が問題視されています。
これら4つについて深堀りしていきましょう。
顧客数の減少
まずは1番多かった「顧客数の減少」について考えてみます。
まず原因のひとつに少子化の影響は捨てきれません。2000年生まれは約119万人、その10年前を見てみると122万人、さらに10年前の1980年は158万人の赤ちゃんが生まれています。
半分が女性と計算してみると約20万人の利用者が消えているわけです。美容施設を利用する年齢層を10代後半から70代くらいまでに広げて考えてみるとさらにその減少数は経営状況に大きな影響を与えていることでしょう。参考:厚生労働省 出生数、合計特殊出生率の推移
さらに顧客数の減少に関係する要因として、セルフ美容の普及があります。
カラーリング、フェイシャルケア、ボディケアだけでなく
今ではネイルやまつ毛パーマもセルフで出来る時代です。
家電量販店にはホームエステ機器が数多く並び、ドラッグストアには豊富なカラーリング剤、
そして100円ショップにすらセルフで出来るジェルネイルのキットが売られています。
コロナ禍でステイホームの時間が増えたことにより、セルフ美容やエステに拍車がかかりました。
客単価減少
顧客数の減少に加えて、客単価の減少です。
この理由には3つの要素が考えられます。
◆客単価低下の原因1 店舗数が増えたこと
技術や店舗の内装、サービスでの差別化に限界が訪れ、価格競争に入りました。
実際に店舗数が多い繁華街ほど価格競争が激しく、驚くほどの低単価でサービスが提供されています。
◆客単価低下の原因2 予約サイトの普及
店舗の発見率を高くするために多くの美容施設は予約サイトを使っています。
利用者はそこでじっくり見くらべる際に価格で比較しやすい状況になりました。
◆客単価低下の原因3 経済の冷え込み
つまり、物価は上がっていく中で人々のお給料は変わらず、節約志向が高まっているからです。前述したセルフ美容に繋がりますが、「出来ることは自分でやって無理な部分のみお店でしてもらう」といったように、
たとえばカットなど出来ない部分だけの利用になるため客単価の減少へ繋がっているのでしょう。
スタッフ不足
さらに経営者を悩ませるのがスタッフ不足です。美容業はすぐに誰でもできるわけではありません。
もちろん技術者のサポートをする程度の業務内容であれば無資格や未経験者でも大丈夫なのですが、
とくに資格取得が必須となっている美容師業はそうはいきません。
そのほかのエステやネイルは無資格でも働くことは出来ますが、即戦力とはできず
一般的な職種より技術取得のために長い期間が必要になります。
そうして長い期間をかけて技術を教えたにも関わらず、
ようやく技術者としてお客様につかせるができる!というタイミングで辞められてしまうということが少なくありません。
美容業界は女性が多い世界です。結婚や妊娠、出産を機に辞めてしまう人や辞めざるを得なくなってしまう人が多い現状も大きな問題となっています。
経営者の高齢化
これは私含め美容業界の経営者で話題に常に上がる問題です。
どの仕事も身体に負担がかかると思いますが美容業の現場に立つ経営者も同じく、
体力的にいつまでできるかと悩んでいます。
後継者を見つけることができればよいのですが、それも難しく頭を悩ませる問題です。
美容業界の課題解決法 4選
ターゲット層の見直し
冒頭でグラフをもとに「美容業施設は増えているのに、理容施設は減っている。理由は男性が理容施設ではなく、美容施設を利用するようになっているから」とお伝えしました。
今や男性に向けた美容市場はコロナ禍以前から伸び続けていて、2020年のメンズコスメ市場は1507億円あり、今後も伸び続けると言われています。
参考:【記者の目】広がるメンズコスメ市場 SNSで美容意識向上、ライフスタイル提案に導入も | 繊研新聞 (senken.co.jp)
さらに株式会社リクルートスタイルがおこなった「男性の美容意識・行動調査2017 サマリー」によると、2011年には1年以内に美容室サロンを利用したことがあったのは33.3%だったのに対して、2017年には39.8%へと6.5%増加、エステサロンは2.7%増加、ヘッドスパなどを含むリラクゼーションサロンでは2.7%増加しています。
以上のことからもこれからは男性を視野に美容業界を盛り上げていくことが可能ではないといえるのではないでしょうか?
参考:【株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー】10ページより
スタッフファンのお客様ではなく、お店のファンを増やす
よくある問題にサロンの指名率NO.1のスタッフが辞めてしまったことで売上が激減してしまったということがあります。スタッフにファンをつけるのは簡単です。
しかし限られたスタッフに売上を依存してしまうほど怖い事はありません。
ひとりのお客様を全スタッフでお迎えフォローするという心構えのもと、お店のファンにすることが大切です。
過去に通っていたヘアサロンですごくシャンプーの上手な見習いスタイリストさんがいました。
引っ越しをしたことによってそのサロンには行けなくなってしまったのですが、今でも彼のシャンプーは忘れることができません。その彼以外にもそのサロンは総評的に良かったと記憶しています。
時代に合わせたサービスの拡大
現在は言わずと知れた高齢化社会でこれからもっと加速していくといわれています。
最近のトレンドとして福祉美容が注目されています。
福祉美容とは介護美容や訪問美容ともいわれ、関連する民間資格も増えており、
認定福祉美容介護士®、福祉理美容師、訪問福祉理美容師などがあります。
すでに動き始めている企業もあり、いかに早く動き施設や個人と契約を結ぶかが勝負かもしれません。
今では当たり前となった産後のアロマトリートメントケアやホテルへの出張マッサージ・エステも始まった当時は画期的なものでした。今そこへ新規参入することはかなり厳しい状況です。
まだ可能性がある福祉美容、検討してみるのも良いと思いませんか?
人材の定着にむけた労務面の改革
2019年から始まった「働き方改革」という言葉はすでに定着しつつありますが、
美容業界はまだ遅れをとっているように感じます。
人材の定着には従業員のライフワークバランスなど働き方改革の実行は欠かせません。
「研修は営業時間外」「仕事は見て覚える」「見習い期間の給料は低くて当然」などそのような昔からの考えに凝り固まっていませんか?
給与や雇用形態・評価制度の見直し、教育やキャリアプランなど誰がみても分かりやすいクリアな状態にしておくことで従業員の満足度向上につながります。
たとえば
- フランチャイズチェーンとして独立のサポートをしてあげるシステム
- 将来のポストを用意する
- 家庭を優先できるように業務委託やアルバイト契約も選択可能にする
- 洗濯や掃除などの雑用は外部委託にして技術のみに従業員は技術に集中してもらう
など新しい取り組みを始めてみてはいかがでしょうか?
ES(Employee Satisfaction)/従業員満足度の向上は、CS(Customer Satisfaction)に繋がります。
従業員満足度をまず考え、経営計画書を作り直すことも良いでしょう。
美容業界にも「働き方改革」は必須です!それを念頭に従業員が楽しく働ける環境を考えてみてください。
さいごになりますが、従業員の働きやすさを考えている素敵なお店を紹介します。
女性優先ヘアサロン、すべての女性を健康で美しく|by emt
こちらの営業時間に注目してください。このお店はどの店舗も平日は18時、土曜は19時で閉店。そして日祝はお休みで、ゴールデンウィークや年末年始はお店ごと長期の連休です。
私が知る店舗で働く従業員のみなさまは生き生きと楽しそうで、良い雰囲気があふれています。
まとめ
美容業界は店舗数が増え続ける一方、廃業に追い込まれてしまうお店も少なくありません。
売上を伸ばすお店とそうではないお店の違いは「時代に合わせて変化していけているか?」
これに尽きるのではないでしょうか?
「時代に合わせたターゲット層の見直し」「時代に合わせた働き方の見直し」
凝り固まった考えは取り払い、まずはこれらの見直しから始めてみることをおすすめします。
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