IT技術が進む現代において、税理士業務はAIに奪われると言われています。しかし、これからの時代、税理士は本当に不要になるのでしょうか?
私はそうではないと考えています。
AIを敵視するのではなくIT技術を駆使しながら、人にしかできないフォローアップをしていくことで、税理士の顧客ニーズはまだまだあるのではないでしょうか?
今回の記事では、税理士業界の現状を踏まえつつ、課題と解決策について詳しく解説していきます。
目次
税理士業界の現状と見通しについて
まず、税理士が置かれている現状ですが、今回は業界全体で特に問題視されている以下の2つを取り上げていきます。
- 現役税理士の高齢化と人手不足
- 顧客の減少
国税庁のホームページに掲載されている令和2年度時点における税理士登録者数は8万近くになっており、登録者数だけを見ると増加傾向にあります。
しかし、税理士を目指す若者は減少傾向にあり、
税理士登録をしても実際に税理士業務に従事していない税理士が増えているなど、人手不足が深刻です。
それなのに2017年国税庁がAIを活用した申告や納税などのデジタル化を打ち出したことで、
税理士業務は増えています。若手が少なく高齢化が進む中でITを必要とする複雑な業務が増えるなど、労働環境が厳しくなっているのが現状です。
以上のことを踏まえ、2つの問題をさらに紐解いてみます。
税理士の高齢化と人手不足
税理士業界では現役で働く税理士の高齢化が問題となっているわけですが、その理由として
- 税理士資格がないと業務ができない
- 機密情報を扱うため、顧客が担当の変更を嫌う
- 税理士法人は税理士2人以上の在籍が必須のため退職しにくい
当然のことながら、税理士業務は税理士資格がないと行うことができません。
また資格を有していても顧客は担当税理士が変わるのを嫌うこともあり、
別の税理士へ引継ぎが難しいのです。
さらに個人で税理士事務所を持つ場合には1人でも開業可能ですが、法人化するには2人以上の税理士を在籍させることが必須のため、
少人数で成り立っている法人税理士事務所では退職がしにくい雰囲気があります。
以上のことから高齢になった税理士が一線を退くことが難しく、高齢化を進める大きな要因となっていることが分かります。
税理士の高齢化がすすんでいる原因はほかにもあります。
- 税理士試験受験者の高齢化
- 国税OBから税理士への転身
- 負担が多い労働環境のため若手税理士の早期退職
税理士試験は科目ごとに受験が可能なため、一度に全科目を受験せず、
何年かかけて数科目ずつ取得していくのが主流です。
そのため税理士資格を取得できる頃には自ずと年齢が上がっているというわけです。
加えて、税理士試験の総受験者数自体も平成27年と令和2年度を比べてみると1万人以上減少しています。
そして国税専門官として一定年数以上の勤務経験がある場合、税理士試験を免除される制度があります。
退職後に税理士として働く国税OBがいるのも税理士高齢化が進む要因のひとつになっています。
若手税理士が減少する理由は、税理士の労働環境と給与体系です。
冒頭で触れたように、国が推し進める申告・納税のAI活用によって顧客から求められる業務が増えています。
しかしその分顧客へ請求できるかというとそうでもなく、税理士の負担が増えているだけに過ぎません。
売り上げを増やせていないので、税理士の給与を上げることもできません。
「負担は増えるのに、給料は増えない」
激務でライフワークバランスを取れずに、離職する若手が少なくないというわけです。
このような若手税理士の離職と登録税理士の高齢化が、税理士業界の高齢化に拍車をかけています。
顧客数の減少と顧客単価の低下
中小企業庁が発表した「中小企業・小規模事業者の数(2016年時点)の集計結果」によると、2014年時点の調査に比べて事業者の数は減少しています。
それに加えて、クラウド型会計システムの発展によって、個人で申告・納税を簡単にできる時代になりました。
不明なことも税理士に聞かなくても、インターネットで簡単に解決可能です。
これまで税理士事務所がメイン収入としてきた顧問報酬を取れることは少なくなり、
確定申告時だけなどスポット業務になるなど、顧客単価も下がってきています。
税理士業界の課題とは
進む税理士の高齢化と顧客減少の現状を踏まえた上での課題は以下の2つです。
- ITスキル×コミュニケーション能力を持つ人材
- 税務処理+αの提供ができる税理士
ITスキルとコミュニケーション能力を兼ね備えた人材を獲得
国が税務のAI化を進める以上、これから税理士でやっていくにはITスキルは必須条件です。
さらにAIには出来ない顧客とのコミュニケーションをカバーするために、
コミュニケーション能力もなくてはならないスキルと言えます。
これからの税理士業界には顧客と顧客の事業に寄り添える人材が必要です。
これからは税に関わることだけでなく、事業計画など今後の展開に合わせて一緒に考えてくれる人間味を持つ税理士が求められる時代になりつつあります。
現代に必要な業務サービスを追加して新規顧客獲得
AIが活躍する現代において、税理士はAIが出来ない部分であるコンサルティングや事業継承になど、
税務関係にプラスしたサービスを求められるようになってきます。
クラウド型会計システムのようなAIができることはAIに任せて、
顧客が求める「事業の悩みに寄り添ってもらえる税理士」へとシフトチェンジしていきましょう。
実際私の知る税理士も貸借対照表や企業の顧客分析を基に、
経営者へ経営戦略相談や提案を行っています。
数々の企業や小売業を担当してきた税理士の視点でできるアドバイスがあるからです。
他にも経営者の高齢化に伴う事業継承や国外進出に必要な国際税務などの知識もあると強みになるでしょう。
その際には「何でも屋税理士」になるより、「個人向けコンサルティング」や「開業サポート」など特化して強みを磨いていくことをおすすめします。
税理士業界の課題解決はITをいかに活用していくか?
ここまでお伝えしてきたように、AIが進むことで税理士に求められることにも変化が起きています。
これから生き残っていくには他の税理士や税理士事務所との差別化がキーポイントになります。
差別化は若手税理士を獲得するためにも有効です。
IT研修制度を拡充する、もしくはITに強い新人税理士を採用する
これから活躍してもらいたいと願うなら、入社してすぐの新人は丁寧に教育していくべきです。
人材不足の状況では、新人にもつい即戦力を求めてしまいます。
しかしながら急激な負担は自信を喪失させ、早期退職に繋がってしまいます。
多様化社会になり、ライフワークバランスを重要視するようになった今では、
仕事とプライベートの線引きも大切です。
ITを活用し、業務の簡素化や効率化を進めることで残業時間や休日出勤の削減を行っていきましょう。
ITを使いこなせる人材を採用したり、既存社員のITスキルのレベルを向上したりすることが必須になります。
RPA導入で業務効率化と労働環境の見直し
雑務やルーティンワークなどはAIに任せて、
税理士は税理士にしかできないことや人間にしかできないことに集中していきましょう。
国が税務関連のAI化を推進する影響や、インボイスなど新制度導入の影響で税理士の事務的作業が増え、本来するべき仕事に手が回らず、
過重労働を生み出している現状となっているわけです。
そのような労働環境が続くことは、良い人材を失ってしまう原因になりかねません。
パソコンで行う単純作業を簡単に自動化させる「PRA」と言われるツールがあります。
PRAを使用すると、Microsoft officeやブラウザなど複数のアプリケーションにまたがる動作を設定し、
自動的に実行動作することが可能になります。
AIに任せられる仕事は任せてしまいましょう!
PRAは税理士の過剰業務を減らすためにも大変優秀なツールです。
業務効率化と労働環境を改善することで、採用の際にもほかの税理士事務所との差別化にもなります。
参考:WinActor® | 業務効率を劇的にカイゼンできる純国産RPAツール
税理士業務+コンサルティングで副業ワーカーやフリーランスの顧客獲得を狙う
上記のように一部の業務を自動化することで、税理士は本来の仕事や新規顧客獲得に集中することができます。
冒頭で触れたように中小企業の数は減っており、
税の申告や納税はクラウド型会計システムで簡単にできるようになりました。
しかし働き方改革によって副業が解禁され、会社員をしながら副業をする人は増えています。
副業で稼げた人は税金に関する知識を求めていますし、稼げない人は稼げる方法を知りたがっています。
個人が税理士に相談というのは費用の問題などもあって、ハードルが高く感じているのです。
そこで、一般的に馴染みのあるSNSやYouTubeを活用し、
税理士をもっと身近に、親近感を持ってもらうことがポイントになってきます。
SNSやYouTubeを活用し、顧客の新規開拓に成功した税理士は少なくありません。
コンサルティングのほかにも多言語に強いがあるなら、
語学を掛け合わせたビジネスにシフトするのも良いでしょう。多様化社会に合わせて、税理士も多様化していく時代になってきています。
まとめ
税理士業界の課題となっている「人材不足による高齢化」、
「顧客減少」を解決キーポイントはITを積極的に活用する「AI」との共存です。
PRA導入で作業負担を減らし、「税理士=過重労働」のイメージを払拭していきましょう。
そして、ITに強い人材を新規採用するだけでなく、
ITスキルの社内研修も積極的に行っていくことも検討してみてはいかがでしょうか?
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