新型コロナウイルス流行以降、在宅・リモートワークの広まりによりオフィスの縮小や移転を進める企業が増えてきました。コスト削減だけを理由にオフィスを縮小した場合、かえって生産性が下がるケースも見受けられます。オフィスを縮小移転することで発生する効果やリスクを理解したうえで、自社に適したオフィスを構築することが大切です。
本記事では、オフィスを縮小移転する企業が増えている背景や、縮小移転した場合のメリット、デメリット、オフィス縮小移転に向いている職種について解説していきます。
目次
オフィスの縮小・移転する企業が増えている理由
近年、オフィスの縮小や移転を進める企業が増えています。テレワークの浸透がその理由です。
パーソナル総合研究所の調査によると、緊急事態宣言が発動される直前の2020年3月時点での正社員のテレワーク実施率は13.2%でした。
参考:第六回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査
公益財団法人「日本生産性本部」が2020年5月から実施している調査によると、2020年5月の31.5%と急激に増加したあとは、20%前後に落ち着いています。新型コロナウイルスの流行前と比べ、テレワーク実施率が上がったことで、執務エリアや会議室スペースに無駄が出てきました。
それにより、小さいオフィスに移転し、オフィスの使い方を見直す企業が増えてきています。経営基盤の安定にコスト削減は欠かせないものです。オフィスの賃料は、コストの中でも大きな割合を占めており、縮小や移転を考えるのは自然な流れといえるでしょう。
ただし、使う機会の減少を理由に安易にオフィスを縮小すればいいわけではありません。オフィスの役割には、コミュニケーションをとることによるチームビルディングもあります。
オフィスの役割に必要な機能は残した状態で、オフィスの使い方を整える企業が増えてきました。
より効率性を求め、本社から離れた場所にサテライトオフィスを置く企業も出てきています。
オフィス縮小移転のメリット
オフィスの縮小移転のメリットには、コスト削減が挙げられます。業務に合わせて働く場所を選択できるようになれば、無駄な工数削減や自律的な働き方の浸透につながり、生産性向上にも期待できるでしょう。
働く場所や時間を選択できれば、働き方の多様化にもつながり、より優秀な人材の獲得にもできるはずです。ここでは、オフィス縮小移転のメリットについて解説していきます。
メリット1 コストの削減が期待できる
オフィスの縮小移転のメリットとして、コスト削減が挙げられるでしょう。オフィスの賃料が下がるだけでなく、光熱費や設備も必要最小限に抑えられるため、コストを削減できます。
テレワークを実施しているのであれば、交通費も削減できるでしょう。また、金額面だけではないコストの削減にも効果があります。テレワークの実施により自席で会議に出席する機会が増加したため、会議室まで移動する時間が削減できるようになりました。その時間を有効活用すれば生産性向上につながるでしょう。
メリット2 生産性の向上
オフィスの縮小移転は、生産性向上にも効果があります。会議やPCを使った業務は、オフィスの外でも対応できます。業務に合わせて働く場所を選択できるようになれば、無駄な工数削減や自律的な働き方の浸透につながるはずです。
オフィスの縮小をきっかけに、働く時間や場所を自律的に選択できる制度を導入する企業が増えてきました。フリーアドレスであれば、他部門のメンバーとコミュニケーションを取る機会が生まれます。
社内カフェやWeb会議専用ブースといったスペースを設置する企業もあるようです。オフィスの快適性を向上させることで、従業員満足度が向上するだけでなく。外部へのイメージアップにもつながります。ホームページやSNSでアピールすれば、採用力の強化にもつながるでしょう。
多様な働き方が浸透することで、新しい組織文化の形成にもつながります。多様な働き方ができる企業には多様な人材が集まるはずです。より優秀な人材の獲得にもつながり、生産性向上に期待できるでしょう。
オフィス縮小移転のデメリット
オフィスを縮小移転する場合のデメリットとして、引っ越し費用やレイアウト構築の費用が発生することが挙げられます。レイアウトの検討や工事手続きといった手間もかかるでしょう。
また、テレワークの導入により、対面で会う機会が減ることで、偶発的なコミュニケーションが不足するリスクがあります。それにより、組織を横断したコミュニケーションがなくなるだけでなく、チーム内での協力体制や信頼関係が崩れてしまうかもしれません。
コミュニケーションを取るための環境整備も並行して進めることで、社員の理解を得るといった対策も必要でしょう。ここでは、オフィス縮小移転のデメリットについて解説していきます。
デメリット1 移転費用や手間が発生する
オフィス縮小移転のデメリットとして、移転費用や手間の発生が挙げられます。たしかに移転後の賃料や光熱費は削減できるものの、引っ越し費用やレイアウト構築には費用が必要です。使用していたオフィスの原状回復費用も必要でしょう。
フロア面積を縮小する場合でも、レイアウト変更だけでなく、電気工事や内装工事が必要です。レイアウトの検討や工事手続きといった手間もかかるでしょう。
また、コストを抑えるために引越しや縮小を従業員で実施するケースがあります。その場合、引っ越し作業中は生産が発生しません。引越しにかかわった従業員の人件費だけがかかることになります。
安易に従業員だけで引っ越し作業をするのではなく、委託した場合の費用と比較して、どちらのほうがコスト削減になるのか検討しましょう。
デメリット2 モチベーション低下のリスクがある
オフィスを縮小したことで、偶発的なコミュニケーションが不足するリスクがあります。これまでのオフィス環境では「廊下で偶然会う」「雑談する」といった偶発的なコミュニケーションがありました。
しかし、オフィスが縮小し対面で会う機会が減ることで、偶発的なコミュニケーションが発生しにくくなります。必要最低限のコミュニケーションになってしまっては、組織を横断したコミュニケーションがなくなり、組織が活性化しません。
同じチーム内でもコミュニケーションの機会が減ることで、協力する姿勢や信頼感が下がってしまうケースがあるでしょう。コスト削減だけを理由にテレワークを進めた結果、仕事の効率が悪くなりモチベーションが下がるケースもあります。
社内カフェの設置やチャットツールの活用で、偶発的なコミュニケーションが発生するような環境整備を並行して進めることで社員の理解を得るといった対策も必要でしょう。
オフィス縮小移転に向いている業種・業界
オフィス縮小移転に向いている業種や業界には、オフィスで業務をしなくても成立する職種が挙げられます。チャットツールの活用でコミュニケーションがとれるのであれば、テレワークでも業務が成立するでしょう。
成果物がわかりやすい職種もオフィス縮小移転に向いています。評価基準を設定することがテレワークを成立させオフィス縮小移転を成功させるカギといえるでしょう。ここでは、オフィス縮小移転に向いている職種について解説していきます。
オフィスで業務をしなくても成立する職種
オフィスで業務をしなくても成立する職種は、オフィス縮小移転に向いています。対面でのコミュニケーションの必要度が高くなく、チャットツールの活用でコミュニケーションがとれるのであれば、テレワークでも業務が成立するでしょう。
ただし、インターネットを介してデータのやり取りを行う場合は、セキュリティ対策が必要です。ハード面での対策だけでなく、従業員へのセキュリティ教育も実施しましょう。
オフィスで業務をしなくても成立する職種には、カスタマーサポートやIT系エンジニア職、マーケティング職が挙げられます。どの職種もひとり作業が多く、PCや電話があれば業務が成立する職種です。
営業職もオフィスで業務をしなくても成立する職種といえます。外回りの営業は1日の大半がオフィスにいないため、テレワークでも成立するでしょう。インサイドセールスはカスタマーサポートやマーケティング職と同様にPCや電話があれば業務が成立するため、テレワークが成立します。
成果物がわかりやすい職種
成果物がわかりやすい職種もオフィス縮小移転に向いています。テレワークでは働く姿を目視できないため、成果物が評価の基準にせざるを得ません。プログラマーやデザイナー、ライターといったクリエイティブ職であれば、PCがあれば業務が成立するだけでなく、明確な成果物が発生します。
評価基準を設定することがテレワークを成立させるカギといえるでしょう。
オフィスを縮小・移転する影響を理解しよう
新型コロナウイルスの流行により、小さいオフィスに移転し、オフィスの使い方を見直す企業が増えてきています。オフィスの縮小移転のメリットには、コスト削減や生産性向上が挙げられます。業務に合わせて働く場所を選択できるようになれば、無駄な工数削減や自律的な働き方の浸透につながり、生産性向上にも期待できるでしょう。
オフィスを縮小移転する場合のデメリットとして、引っ越し費用やレイアウト構築の費用が発生することが挙げられます。対面で会う機会が減ることで、偶発的なコミュニケーションが不足するリスクもあるでしょう。コミュニケーションを取るための環境整備も並行して進めることで、社員の理解を得るといった対策も必要です。
オフィス縮小移転に向いている業種や業界には、オフィスで業務をしなくても成立する職種や成果物がわかりやすい職種が挙げられます。コミュニケーションのとり方や評価基準を設定することが、オフィス縮小移転を成功させるポイントです。
オフィスを縮小・移転する影響を理解し、自社に適したオフィス構築を検討しましょう。
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