生産年齢人口・労働人口が減少していくなか、人手を確保するには「選ばれる会社」であることが重要です。「選ばれる」とは、就職活動生に選ばれるだけでなく、転職で選ばれることや、今いる従業員に働き続けてもらえることも含みます。
そのためにできることの一つが福利厚生を充実させることです。
とはいえ、
・どんな福利厚生が従業員から喜ばれるのか
・人気の福利厚生の種類は?
という疑問が生じますよね。
この記事では人気の福利厚生の種類を解説します。男女別でのランキングも紹介しているので参考にしてみてください。
福利厚生には法定福利厚生と法定外福利厚生がある
そもそも福利厚生とは、企業が従業員やその家族に提供する制度やサービスのことで、給与や賞与以外のものを示します。
福利厚生には大きく分けて2種類あります。1つは法定福利厚生と呼び、法律で義務とされているものです。具体的には、健康保険・介護保険・厚生年金・労災保険・雇用保険があります。
もう1つは法定外福利厚生と呼び、企業が自由に実施する福利厚生です。例として、住宅手当・家賃補助、法定外の健康診断の補助、通勤手当、食堂の設置、育児・介護サービス、結婚や出産のお祝い金、宿泊施設利用費の補助などがあります。
法定外福利厚生のなかでも、手当やお祝い金、特別休暇の制度は自社で運用しますが、飲食店割引やスポーツジム補助など施設やサービスの利用補助は、会社として一括して様々な割引を利用できる外部サービスを使うことも珍しくありません。
その理由は、従業員の年代・性別・好みなどによって必要とされる福利厚生サービスが異なるため、一つ一つ手配するのでは従業員の需要と一致させるのが困難であり、また導入・管理コストも高くなるためです。
福利厚生の種類を人気ランキングで紹介
福利厚生の種類を人気順で見ていきましょう。マンパワーグループの調査によると、「会社の福利厚生として良いと思うもの」「実際にあった福利厚生でよかったと思うもの」は以下のとおりでした。
【会社の福利厚生として良いと思うもの】
1位:住宅手当・家賃補助
2位:食堂、昼食補助
3位:人間ドックなど法定外の健康診断
4位:育児休業、介護休業(法定以上)
5位:バースデー・リフレッシュ休暇
6位:資格取得手当
7位:余暇施設、宿泊施設・レジャー施設などの割引制度
【実際にあってよかったと思うもの】
1位:食堂・昼食補助
2位:住宅手当・家賃補助
3位:余暇施設、宿泊施設・レジャー施設などの割引制度
4位:財形貯蓄制度
5位:人間ドックなど法定外の健康診断
6位:社員旅行、歓送迎会など親睦会補助金
7位:生命保険の団体割引
「良いと思うもの」「あってよかったと思うもの」どちらでも「住宅手当・家賃補助」および「食堂、昼食補助」の順位は高く、生活に直結した福利厚生が重視される傾向が見えました。
「食堂、昼食補助」は費用補助の側面だけでなく、栄養バランスのある食事が摂りやすくなりますし、「良いと思うもの」で「人間ドックなど法定外の健康診断」が高順位にランクインしていることから、健康志向の高さもうかがえます。
「育児休業、介護休業(法定以上)」「バースデー・リフレッシュ休暇」の順位が高いことから、労働時間を減らす制度の需要も高いと言えますね。
※参照:マンパワーグループの調査
https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/surveydata/150422_01.html
男女別に見る人気の福利厚生の種類
人気の福利厚生の種類は、男女別でやや傾向が異なります。株式会社ビズヒッツが行った「あったら嬉しい人気の福利厚生ランキング【働く男女501人アンケート調査】」では、以下のような順位でした。
男性に人気の福利厚生
1位:家賃補助・住宅手当
2位:旅行・レジャーの優待
3位:特別休暇
3位:スポーツクラブの利用補助
5位:社員食堂・食事補助
女性に人気の福利厚生
1位:特別休暇
2位:家賃補助・住宅手当
3位:旅行・レジャーの優待
4位:社員食堂・食事補助
4位:生理休暇
「家賃補助・住宅手当」「旅行・レジャーの優待」「特別休暇」「社員食堂・食事補助」は男女どちらにもランクインしています。しかし、「スポーツクラブの利用補助」は男性の順位が高く、女性の回答で「生理休暇」がランクインしているのも特徴的です。
「スポーツクラブの利用補助」は女性の票も10票ありますので、決して少ないとは言えず、性別問わず需要があると言えます。一方、「生理休暇」はほとんどが女性からの票です。生理で不調を抱えていたり、我慢したりしている女性は少なくないのかもしれません。
※参照:株式会社ビズヒッツ調査
https://bizhits.co.jp/media/archives/20475
福利厚生のメリット・デメリット
福利厚生を導入するのにはメリットとデメリットがあります。導入する際には、メリットを把握し、かつデメリットをカバーできるよう対策を講じましょう。
福利厚生のメリットは「選ばれる会社」一つの要素であること
福利厚生のメリットは、従業員満足度・エンゲージメントを向上させられることです。子育て支援や外食やレジャーの割引など、生活にかかるコストを下げられます。
法定以上の健康診断がお得に受けられることで、従業員の健康増進の面も。給与は簡単に上げられなくても、福利厚生を導入することで間接的に従業員の生活サポートが可能です。
また、福利厚生は離職率低下の効果もあると言えます。「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」では、福利厚生に満足しているほど、現在の会社に勤め続けたいと考えている割合が高いことが明らかになりました。一方で、福利厚生に不満足であるほど、どちらかと言えば勤め続けたくない・勤め続けたくないの割合が高くなっています。
福利厚生に「満足」「やや満足」と回答している人は現在の会社に「勤め続けたい」「どちらかと言えば勤め続けたい」と回答している割合が高く、一方で福利厚生に「やや不満足」「不満足」と回答している人は「どちらかと言えば勤め続けたくない」「勤め続けたくない」の割合が高かったです。
経営者や人事担当者の肌感覚としては「福利厚生を良くしたところで離職を防げるのか疑問」と考えるかもしれませんが、調査結果を見る限り、福利厚生の充実で離職を防ぐ効果が期待できると言えそうです。
※参照:「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の調査
https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html
また「マイナビ 2023年卒大学生 活動実態調査(3月1日)」では、就職活動生にとっても福利厚生を重視していることが判明しています。「就職先として企業を選ぶ際のポイント」を尋ねたところ、「福利厚生が充実している」は3番目に多い回答で59.6%でした(複数回答可)。
少子高齢化により生産年齢人口や労働人口の減少が予測されるなか、「選ばれる会社」であることが求められています。ここまで紹介した調査から、福利厚生を充実させることは「選ばれる会社」に必要な要素の一つと言えますね。
※参照:「マイナビ 2023年卒大学生 活動実態調査(3月1日)」
https://www.mynavi.jp/news/2022/03/post_33431.html
福利厚生のデメリットはコストと利用されない恐れがあること
法定外の福利厚生を導入するデメリットも存在します。まず、費用と管理のコストがかかってしまう点です。手当やお祝い金を支出するには予算が必要となりますし、手配のための人件費もかかります。法定外の健康診断やレジャー補助などは、外部サービスを利用することも可能ですが、その場合でも費用は必要です。
また、従業員の需要と一致しなければ利用されない恐れがあります。例えばスポーツジムの利用補助、飲食店やマッサージ店の割引は、日常生活に密接している使いやすいサービスです。しかし、サービス対象のお店が従業員の生活圏になければ、使いにくいものとなってしまいます。実際に利用できるサービスが従業員の生活圏で使えるものかは確認しましょう。
ほかにも、宿泊施設も高級な施設を割引利用できるとしても、給与の低い若者は元々の価格が安い宿泊施設を利用するかもしれません。レジャーにおいても、テーマパークや映画館割引のように利用しやすいものと、好みの分かれるものがあります。
福利厚生を導入する目的は従業員満足度・エンゲージメントを高めることであり、従業員が喜んで利用できるものでなければ、効果は薄れてしまいます。選ぶ際には「従業員が利用できるか・利用しやすいか」の視点を忘れず、迷ったら従業員の声を聞いてみるのも一つの手段です。
まとめ:人材確保のためにも福利厚生の活用を
福利厚生は「選ばれる会社」にとって必要な要素の一つです。導入することによって、従業員満足度・エンゲージメントの向上が期待でき、優秀な若者を採用できる確率も期待できるため、効果的に導入したいですね。
一方、費用や管理コストがかかるデメリットはありますし、従業員の希望と一致しなければ充分な効果は期待できないでしょう。コストを無駄にしないためにも、人気やトレンドを把握し、従業員に喜ばれる福利厚生サービスの導入を検討してみてください。
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