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民泊・不動産コラム

ドラマ正直不動産シーズン1第8話に学ぶ不動産トラブル3事例

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不動産トラブルで相手を見極めるとき、謝罪や肩書だけを信用してはいけません。見るべきものは、事実を記録できるか、問題を指摘された後に何をしたかです。私が現場で遭遇した3つの事例から、その判断軸を紹介します。

『正直不動産』第8話で永瀬が止めたのは「小さな違和感」

ドラマ『正直不動産』シーズン1第8話では、土地の所有者になりすまして売却を進める、いわゆる地面師が登場します。

永瀬たちは、300坪ほどある高額な土地の取引を進めていました。転売できれば大きな利益が出るため、社内では利益が出ることを前提に話が進みます。

しかし、永瀬は取引相手の言葉や振る舞いに小さな違和感を覚えました。その感覚を無視せず、手付金を支払う前に取引を止めます。相手は地面師で、その後逮捕され、会社は大きな被害を免れました。

私自身は、数億円、数十億円規模の地面師案件を扱った経験はありません。中小の不動産会社に、典型的な地面師案件が持ち込まれる機会は多くないからです。

ただし、不動産の仕事をしていると、次のような場面には遭遇します。

「この人は、本当に所有者なのか」

「この人の説明を、そのまま信用してよいのか」

決定的な証拠が出てから止めるのでは遅いことがあります。確認できない状態で先に進まない。これが『正直不動産』第8話と現実の取引に共通する教訓です。

このテーマは本編動画でも解説しています。動画では、本人確認を拒んだ人物、土地への無断工事、私道を封鎖しようとした近隣住民とのやり取りを、実際の経験をもとに紹介しています。
ドラマ「正直不動産」第8話と不動産トラブル3事例を解説した動画

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本人確認を拒む「所有者」とは取引を始めない

周囲に知られず売りたい事情と、不動産会社にも身元を明かさないことは、まったく別の話です。

沖縄にある分譲リゾートマンションについて、ある女性から売却相談を受けたことがあります。女性は自分が所有者だと名乗り「芸能関係の仕事をしているため、水面下で売却したい」と説明しました。

秘密裏に不動産を売却したいという要望自体は珍しくありません。有名人に限らず、近隣住民、親族、勤務先などに知られたくない売主はいます。

そこで通常どおり、公的な身分証明書の提示を求めました。

ところが、女性は本人確認書類を出したがりません。理由を尋ねると、再び「水面下で売りたいから」と答えました。

周囲に売却を知られたくない気持ちは理解できます。しかし、仲介を依頼する不動産会社まで、目の前にいる人が誰なのか確認できない状態では取引を始められません。

何度説明しても本人確認書類を提示しなかったため、依頼は断りました。その女性が本当になりすましだったかどうかは分かりません。分からないからこそ、進めてはいけないのです。

国土交通省によると、宅地建物取引業者は、不動産売買の契約締結や代理・媒介などの特定取引において、顧客の取引時確認や、疑わしい取引の届出などを求められます。

参考:不動産業における本人確認と疑わしい取引の届出

本人確認を求める会社は、融通が利かない会社ではありません。売主、買主、真の所有者を守るために、止まるべきところで止まっている会社です。

土地への無断工事は、謝罪より「その後の行動」を見る

謝罪は言葉ですが、解決は行動です。土地の状態を変えた以上、「申し訳ありませんでした」だけでは元に戻りません。

東京都某所の土地の売却案件では、土地所有者へ無断でその土地に手を加えた事例がありました。

境界は明確に設置されていました。しかも、行為者は一般の人ではなくプロです。「境界に気づかなかった」「うっかり手を入れた」では済まない状況でした。

問題を指摘すると、相手は平謝りしました。言葉だけを聞けば、深く反省しているように見えます。

しかし、本当に問題を解決する意思があるなら、最低限、次の点が具体化されるはずです。

  • 何を、どこまで変えたのか
  • 誰が責任を持つのか
  • いつまでに元の状態へ戻すのか
  • 原状回復の費用を誰が負担するのか
  • 同じことを繰り返さないために何をするのか

謝罪が丁寧だったかどうかは、判断材料の一部にすぎません。原状回復の計画、期限、費用負担が決まらなければ、問題は何も解決していません。

不動産トラブルでは、言葉より、その後の行動を見ます。

私道の持分がなければ通れない、とは限らない

私道の通行可否は、登記名義だけでは決まりません。道路の指定、従来の利用状況、通行の必要性、徒歩か自動車かといった事実関係を分けて確認する必要があります。

横浜市内で、私が売主として所有していた土地をめぐり、私道通行のトラブルが起きました。

その土地は私道にしか接しておらず、私道の持分はありませんでした。近隣住民は、その私道を自分だけの占有敷地だと思い込み、私に対して「ここを通るな」と主張しました。

私が拒否すると、通行を妨害するため、道路上に鉄柱の柵を設置しようとしました。

しかし、その土地と建物は、前所有者の時代から少なくとも30年間にわたり、その私道を通って利用されていました。他に、土地へ到達する道路もありません。

そこで、やり取りを動画と音声で記録し、警察にも現場の状況を記録してもらいました。さらに、鉄柱を設置しようとした工事業者を呼び、誰の指示で、誰の費用負担によって工事を行おうとしたのかをその場で確認しました。

建築基準法上の道路でも通行方法は個別に判断される

最高裁判例では、建築基準法上の指定を受け、現実に開設されている私道について、通行が日常生活上不可欠な人は、一定の条件のもとで妨害の排除や将来の妨害禁止を求められると判断されています。

一方、同じ判決では、従来ほとんど自動車が通っておらず、土地を賃貸駐車場として利用するための自動車通行については、「日常生活上不可欠」とはいえないとして請求を認めませんでした。

参考:私道の通行妨害に関する最高裁判決

つまり、「建築基準法上の道路だから、誰でも自由に車で通れる」という話でも、「個人名義の私道だから、所有者が自由に封鎖できる」という話でもありません。

確認すべきなのは、次のような事実です。

  • 建築基準法上、どの種類の道路として扱われているか
  • その私道以外に公道へ出る経路があるか
  • 徒歩や車両で、どのように使われてきたか
  • 何年程度、通行が続いてきたか
  • 通行を認めることで私道所有者にどのような損害が生じるか

話が通じない相手を延々と説得しても、権利関係は整理されません。記録を残し、道路の指定状況や利用経緯を確認したうえで、必要なら民事調停や裁判へ切り替えたほうが早い場合があります。

証券顧客と不動産顧客では「関わる入口」が違う

不動産で想像を超える相手に出会いやすい理由は、住宅が余剰資金で買う商品ではなく、生活基盤だからです。

ここからは統計ではなく、証券業界と不動産業界の両方で顧客と接してきた私の体感です。

証券会社の顧客は、基本的に余剰資金を持っています。生活費や遊興費を使ったうえで、さらに残ったお金を運用したい人が多い。

病気、介護、失業など、本人の努力だけでは解決できない事情は別です。しかし、普通に働き、一定の収入があるにもかかわらず、毎月5,000円、1万円も残せない場合、収入だけでなく、お金の使い方や計画性に問題があると言わざるを得ません。

一方、毎月1万円を積み立てている人や、50万円、100万円単位で運用している人は、大金持ちでなくても、生活の中から余剰資金を作っています。支出を管理し、使うお金と残すお金を分けられる人です。

不動産、特に家は違います。

株式や投資信託を持たなくても生活できます。しかし、住む場所なしでは生活できません。経済的に余裕がなくても持ち家を所有している人はいます。親から相続し、本人の意思とは関係なく不動産に関わる人もいます。

証券投資は、余剰資金を作った人が自分から参加する世界です。不動産は生活そのものなので、経済状況、計画性、価値観に関係なく、誰もが関わる可能性があります。

これは、証券顧客と不動産顧客のどちらが人間として上か下かという話ではありません。入口の条件が違うため、関係者の属性や経済観念の幅も大きく異なるという話です。

そのため、不動産の現場では、丁寧に説明すれば理解してくれる人だけでなく、こちらの低姿勢を「自分の主張が正しい証拠」と受け取る人にも出会います。

丁寧・謙虚だけでは不動産トラブルから身を守れない

丁寧さや謙虚さが機能するのは、相手も同じ価値観を持ち、誠実に対応する場合です。不誠実な相手に譲り続ければ、要求がさらに強くなることがあります。

不動産トラブルに遭遇したときは、相手の性格を変えようとするより、次の対応へ切り替えます。

  1. 本人確認や権利関係を資料で確認する
  2. 確認できない状態では取引を進めない
  3. 会話、現場、工事前後の状態を記録する
  4. 謝罪ではなく、期限・費用負担・原状回復を見る
  5. 話し合いが成立しなければ、民事調停や裁判を検討する

不動産会社へ何でも任せれば安全になるわけではありません。まず自分が最低限の知識を持ち、そのうえで、都合の悪いことも説明する担当者を選ぶ必要があります。

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FAQ

Q:周囲に知られず不動産を売る場合でも、本人確認は必要ですか?

A:必要です。周囲へ売却情報を公開しないことと、仲介会社が売主本人を確認しないことは別問題です。本人確認に応じないまま売却活動を始める会社は、むしろ警戒すべきです。

Q:私道の持分がなければ、その道路を通行できないのですか?

A:持分がないだけで、直ちに通行できないとは決まりません。道路の指定、他の経路の有無、過去の利用状況、通行方法などによって判断が変わります。徒歩通行と自動車通行も分けて確認する必要があります。

Q:近隣住民が私道を封鎖しようとしたら、何を記録すべきですか?

A:工作物の位置、工事前後の状態、日時、指示者、施工業者、費用負担者、相手との会話を記録します。道路の指定状況、登記、過去の通行実績も整理しておくと、その後の民事調停や裁判で事実を説明しやすくなります。

Q:相手が謝罪したら、不動産トラブルは解決したと考えてよいですか?

A:謝罪だけでは解決していません。誰が、いつまでに、どの方法で原状回復し、費用を負担するのかまで具体化されて初めて、解決に向けて動き始めたと判断できます。

まとめ

不動産トラブルで判断の分かれ目になるのは、相手が丁寧に話したかではなく、事実確認に応じ、その後に責任ある行動を取ったかどうかです。

確認できなければ止める。現場と会話を記録する。謝罪より行動を見る。話し合いが成立しなければ、法的手続きへ切り替える。そして、自分で知識を持ったうえで、信頼できる不動産エージェントを選ぶ。この順番が、自分の財産を守ります。

この記事を書いた人

杉山 広
杉山綜合財務管理株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

証券・不動産・資産管理の実務経験をもとに、不動産取引で判断を誤らないための知識と現場事例を発信しています。