証券会社や銀行に勧められた金融商品は、その場で買わないでください。ただし、すぐ断る必要もありません。判断すべきなのは「良い商品か」ではなく、自分の資産のどこに置き、いくらまで持てるかです。
証券会社のおすすめ商品をその場で買わない理由
金融機関が売りたい商品と、あなたに必要な商品が一致するとは限りません。
証券会社や銀行の担当者が、必ずしも悪い商品を売ろうとしているわけではありません。顧客の役に立とうと考えて提案している担当者もいます。
一方で、民間企業には営業方針があります。会社として力を入れている商品や、販売目標が設定された商品が存在するのも事実です。
金融庁も、販売の主力商品が短期間に変わるケースについて、それが本当に顧客ニーズへ対応した結果なのかという問題を指摘しています。特に仕組債については、一般的な顧客の中長期的な資産形成ニーズに適さない可能性や、想定顧客層が明確でないまま販売されていた問題が示されています。
提案を受けたら、一つだけ確認してください。
「なぜ、この商品が私に合うと思ったのですか。」
回答が「金利が高いから」「人気があるから」「今しか買えないから」であれば、それは商品の魅力を説明しているだけです。あなたに合う理由にはなっていません。
現在の保有資産、今後お金を使う予定、許容できる損失まで踏まえた説明になっているかを聞き、その日は決めずに持ち帰ります。
この記事について、動画でも解説しています。よろしければご覧ください。
証券会社や銀行に勧められた金融商品、このまま買っていいですか?│証券マンが解説します
商品を見る前に資産を3つの役割に分ける
金融商品を単体で評価する前に、運用資産を「コア・ミドル・スパイス」の3階層に分けます。
コア投資
コアは、運用の土台となる資産です。
大きく減ると老後の生活や今後の計画に影響する資産を置きます。商品構造がわかりやすく、自分で理解でき、長期間保有できることが前提です。
「大きく増やす」より「致命的に減らさない」という役割を持たせます。
ミドル投資
ミドルは、ある程度の値動きを受け入れながら、積極的に増やす資産です。
割安株、国策テーマ、急落によって投資妙味が高まった大型株など、上昇余地を狙う投資を置きます。ただし、投機的な小型株や仕手株をミドルに入れる話ではありません。
スパイス投資
スパイスは、ハイリスク・ハイリターンを狙う資産です。
新興国通貨建ての高利回り債券、小型の新興株、暗号資産などが該当します。ここはゼロでも構いません。
投資する場合も、大きな損失が出たり、価値がほぼなくなったりしても、生活や事業に影響しない金額に限定します。
一例を挙げるなら、コア60%、ミドル30%、スパイス10%です。ただし、この比率が全員の正解ではありません。年齢、収入、資産額、投資経験、今後の支出予定によって変わります。
リスク許容度は収入や資産額、投資経験、ライフイベントなどによって資産配分は異なり、それを踏まえてポートフォリオを考える必要があります。
筆者の場合
私自身は記事執筆時点で、コア60%、ミドル40%程度です。日本の個別株の保有割合を増やしており、スパイスに分類する投資はほとんど行っていません。
この配分を真似してほしいわけではありません。重要なのは、保有する金融商品すべてに役割を持たせることです。
役割を決めずに、おすすめされた商品を次々に買うと、ポートフォリオがごちゃごちゃになります。複数の商品を持っているため分散できているように見えても、実際には同じリスクを何重にも抱えていることがあります。
提案されたら注意したい3つの金融商品
ローリスク・ローリターンのように見えても、実際にはスパイスに近い商品があります。
1.仕組債
仕組債は、一般的な債券にデリバティブ取引を組み合わせた商品です。
高い利息には理由があります。株価や株価指数が下落した場合に生じる損失の一部を、投資家が引き受ける構造になっているからです。
早期償還条項がある商品では、条件を満たすと予定より早く償還され、その後の利息は受け取れません。一方、参照する株価などが下落すると、償還金が減ったり、現金ではなく値下がりした株式で償還されたりすることがあります。
日本証券業協会も、仕組債には参照指標の変動による償還損、価格変動、為替変動、換金できない可能性などがあると説明しています。
EB債の場合、債券でありながら、対象株式の値動きによって別会社の株式で償還され、投資元本を下回る可能性があります。
ここまで読んでも仕組みがよくわからない場合、仕組債は買わないでください。理解できない商品は、コアだけでなくスパイスにも入れない方がよいと私は考えています。
2.新興国通貨建ての外債
高金利はプレゼントではありません。政治、経済、金融、通貨に関するリスクの対価です。
利息を多く受け取っても、投資先の通貨が円に対して大きく下落すれば、為替差損によって利益が消えます。途中で売却する場合には、市場価格や流動性の問題もあります。
金融庁も、新興国通貨建て債券は先進国通貨建て債券よりボラティリティーが高く、投資先の政治・経済・金融情勢を理解できる顧客へ対象を絞る取り組みを紹介しています。
参考:金融庁「資産運用立国の実現に向けた顧客本位の業務運営」
金利が何%かを見る前に、「なぜ、これほど高い金利を払わなければ買ってもらえないのか」と考えてください。
3.情報の少ない新興国の個別株
外国株式全体を否定する話ではありません。全世界株式などを通じて海外へ分散することには意味があります。
応援したい企業や、成長性を高く評価する具体的な根拠があり、その会社の株式を買うのであれば話は別です。
しかし、特に思い入れも分析材料もないのであれば、あえて情報の少ない外国個別株、特に新興国の個別株を選ぶ必要があるでしょうか。
「国が成長しているから、その国の個別株も上がる」とは限りません。国全体の経済成長と、特定企業の利益、株主還元、株価評価は別の話です。為替、政治、会計制度、企業統治なども投資結果に影響します。
その会社を選ぶ理由を自分の言葉で説明できないなら、一度立ち止まるべきです。
危険度を決めるのは商品名だけではなく買う金額
同じ金融商品でも、資産の一部として持つのか、運用の中心に置くのかで結果は変わります。
運用資産が1,000万円ある人が、スパイス投資として50万円を投資したとします。その商品が半値になれば、損失は25万円です。資産全体への影響は2.5%です。
一方、同じ商品に500万円を投資して半値になれば、損失は250万円です。資産全体の25%を失います。
商品名は同じでも、資産全体に与える打撃は10倍です。
考えるべきなのは「この商品は上がるか」だけではありません。
予測が外れたとき、生活や事業にどの程度影響するか。
例えば仕組債について、私は積極的に買いたい商品だとは考えていません。それでも投資するなら、少なくともコアには置かず、損失が出ても資産全体への影響を限定できる金額にします。
なお、2.5%の損失を許容できるかどうかも人によって違います。数値だけで決めず、近い将来に必要となる資金や心理的な負担まで含めて判断してください。
買ってよいケースと一度止めるケース
購入を検討できるのは、次の条件がそろっている場合です。
- 保有資産や将来の支出まで踏まえた提案理由がある
- コア・ミドル・スパイスのどこに置くか決まっている
- 最大でいくらまで持つか決まっている
- 値下がりした場合の損失を受け入れられる
- 商品構造と主なリスクを自分で理解できる
反対に、次の状態なら一度止めます。
- 提案理由が「高金利」「人気」「今だけ」に終始している
- その商品を資産のどこに置くか決められない
- 近いうちに使う予定の資金を投じようとしている
- 説明を聞いても仕組みが理解できない
- 一つの商品やリスクへ資産が偏りすぎる
証券会社や銀行は、敵でも先生でもありません。上手に利用すれば有力な情報源になり、相性のよい担当者であれば相談相手にもなります。
ただし、最終的な判断を担当者へ預けてはいけません。
無料ガイドブック
金融機関のノルマや利益相反を踏まえた相談相手の選び方、仕組債など注意したい商品の構造を『信頼できるアドバイザーの見抜き方』にまとめています。
FAQ
Q:証券会社のおすすめ商品は、すべて買わない方がよいですか?
A:すべてが悪い商品とは限りません。ただし、会社が販売したい理由と、あなたに必要な理由は別です。その場では決めず、資産全体における役割と投資金額を確認してください。
Q:「金利が高いからおすすめ」は提案理由になりませんか?
A:それは商品の特徴を説明したものです。すでに外貨資産を多く持っている人と、外貨資産をほとんど持っていない人では、高金利の外貨商品を追加する意味が変わります。
Q:仕組債は少額なら買ってもよいですか?
A:金額を抑えれば資産全体への影響は限定できますが、商品構造を理解できない場合は、少額でも購入しない方がよいでしょう。少額であることと、商品が自分に適していることは別です。
Q:コア60%、ミドル30%、スパイス10%が適正配分ですか?
A:これは一例です。年齢、収入、資産額、投資経験、今後の支出予定によって変わります。スパイスはゼロでも構いません。
Q:ハイリスク商品は資産の何%までなら安全ですか?
A:全員に共通する安全な比率はありません。割合から決めるのではなく、想定する損失額を計算し、その損失が生活や事業へ与える影響から逆算してください。
まとめ
投資で成功するコツは、銘柄を当てることではありません。大事なのは、予測が外れても資産全体が致命傷を負わないように設計することです。
証券会社や銀行から金融商品を勧められたら、その商品を資産のどの階層に置くのか、いくらまでなら持てるのかを決めます。この二つが決まらなければ買わない。私はこの基準で判断しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得や売却を推奨するものではありません。
この記事を書いた人
杉山 広
杉山綜合財務管理株式会社 代表取締役/宅地建物取引士
証券業界での資産運用アドバイスと、自らの証券・不動産投資の経験をもとに、金融商品を選ぶための判断材料を発信しています。