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民泊・不動産コラム

リノベーション済み中古住宅の注意点|正直不動産に学ぶ

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「リノベーション済み」「インスペクション済み」は、住宅の安全を保証する言葉ではありません。購入前に確認するのは、内装の新しさではなく、工事の範囲、漏水の原因、調査できなかった部分です。

『正直不動産』第5話で床下に何が隠れていたのか

『正直不動産』シーズン1第5話では、築浅のリノベーション済みマンションが登場します。

内装はきれいで、インスペクションの結果も「問題なし」。
それでも山下智久さん演じる永瀬は、寝室の床がわずかに沈むことに気づきます。

床を開けると、内部には過去の浸水跡が残り、断熱材まで腐食していました。ミネルヴァ不動産は漏水を十分に処置せず、表面をきれいにして販売しようとしていたのです。

作中では、インスペクターの中立性にも問題があったため、単純に「非破壊調査だから見つからなかった」とは言い切れません。

ただし、床や壁に覆われた内部を通常の調査では確認できないこと、表面をきれいにすれば不具合が見えにくくなることは、現実の中古住宅にも共通します。

この回の教訓は明確です。

「調査済み」と「見えない部分にも欠陥がない」は、同じ意味ではありません。

「リノベーション済み」は工事範囲の証明ではない

販売図面に「リノベーション済み」と書いてあっても、配管や下地まで更新したことにはなりません。

床とクロス、水回り設備を新しくすれば、室内は新築のように見えます。

キッチン、浴室、トイレなどの水回りが新しくなっていることは、購入者にとって大きなプラスです。水回り設備は交換費用が高いため、すでに工事されていれば購入後の負担を抑えられます。

ただし、設備本体を交換したことと、その下を通る給排水管を交換したことは別です。

確認すべきなのは「フルリノベーション」という広告文句ではなく、どこを工事して、どこはそのままなのか、です。

  • 工事内容一覧や仕様書
  • 施工前・施工中の写真
  • 配管の交換範囲が分かる図面

などの資料があるならば出来るだけ確認したほうがいいでしょう。

漏水歴で見るのは、濡れた場所ではなく水の発生源

漏水歴がある物件で最も知りたいのは、どこが濡れたかではありません。

水がどこから来たのかです。

マンションなら、上階からの漏水、室内設備の接続部分、専有部分の配管、共用部分の立て管などが考えられます。

戸建てなら、屋根や外壁からの雨水、室内の給水管・給湯管・排水管などを切り分けます。

発生源によって、修理すべき人、工事範囲、再発リスクが変わります。

マンションと戸建てでは、見る場所が違う

マンションと戸建てを同じ基準で確認すると、費用の大きな部分を見落とします。

住宅の種類 購入前に見る部分 確認資料
マンション 専有部分の給排水管、漏水履歴、室内工事の範囲 工事図面、リフォーム申請書類、管理規約
マンション共用部分 外壁、屋上防水、共用配管、大規模修繕 長期修繕計画、修繕履歴、総会議事録
戸建て 屋根、外壁、給排水管、床下、小屋裏 工事履歴、施工写真、修理報告書、保証書

マンションは専有部分と共用部分を分ける

リノベーションマンションの外壁、屋上、廊下、共用配管などは、基本的に管理組合が修繕する範囲です。室内のリノベーションとは分けて考えます。

買主が特に確認したいのは、所有者の負担となる専有部分の給排水管です。

「配管交換済み」と説明されたら、給水管、給湯管、排水管のどれを交換したのかを確認します。

私が実務で見る範囲では、専有部分の給排水管更新に70万〜80万円程度かかる例もあります。床や壁の復旧範囲によって金額は変わりますが、設備の下にある配管が古いままなら、購入後の追加費用として考える必要があります。

戸建ては屋根、外壁、給排水管を見る

戸建てを長く使ううえで、最初に見たいのは屋根、外壁、給排水管です。

繰り返しですが、内装は購入後でも比較的直しやすい一方、雨漏りや配管からの漏水によって下地や構造部分まで傷むと、工事費は一気に膨らみます。

「屋根リフォーム済み」でも、塗装、カバー工法、葺き替えでは工事内容が違います。この記事では工法の優劣までは扱いませんが、どの工法で、いつ工事したのかはぜひ確認して欲しいと思います。

屋根、外壁、給排水管がすべて未改修で、下地の腐食や雨漏りまで見つかれば、それらを修繕するには、土地代を除いた低価格帯の新築住宅一棟分に近い費用になることもあります。

そのため中古住宅は、販売価格だけで判断してはいけません。購入後の修繕費まで加えた総額で、ほかの中古住宅や新築住宅と比較します。

インスペクション済みでも欠陥なしとは限らない

インスペクションは住宅の状態を把握するための入口であり、安全を保証する最終回答ではありません。

一般に「ホームインスペクション」は住宅診断全般を指します。一方、宅地建物取引業法上の「建物状況調査」は、所定の講習を修了した建築士が、定められた方法に基づいて行う調査です。

国土交通省も、建物状況調査は瑕疵がないことを保証するものではないと明記しています。
建物状況調査の目的・実施者・制度を確認する

調査は、歩行など通常の方法で移動できる場所から行います。家具や仕上材に隠れた部分、点検口がなく確認できない部分は、調査を省略でき、報告書上は「調査できない」と扱われます。
既存住宅状況調査で調査できない部分の扱いを確認する

つまり、どの部分を調査できなかったのかが重要です。

戸建ては床下・小屋裏・屋根を調査範囲に入れる

国土交通省は、標準的な建物状況調査の費用について6万円程度からを目安としています。

ただし、戸建てで床下への進入、小屋裏、屋根の詳細確認まで求めれば、追加料金が発生します。実務上、床下・小屋裏・屋根まで確認するなら、10万〜15万円程度の予算を見ておくと依頼先を選びやすくなります。

室内の見える範囲だけで終われば、購入判断の材料としては弱くなります。床下点検口の有無、屋根の確認方法、小屋裏へ進入するのかを、見積もりの段階で確認してください。

床の沈み、カビ臭、雨漏り跡などの兆候が見つかった場合は、通常の調査だけで終わらせず、詳細調査へ進むか、購入を見送る、という判断が必要になります。

床や壁を開ける調査には売主の承諾が必要です。ドラマのように床を剥がす調査が、一般的に行われるわけではありません。

売主がインスペクションを嫌がる本当の理由

売主がインスペクションを拒否するのは、欠陥を隠しているからとは限りません。

買主の調査で重大な不具合が見つかり、その結果が売主や売主側仲介へ共有されたとします。今回の買主が購入を見送っても、売主側には不具合を知った事実が残ります。

その後の取引では、次の購入希望者への説明が問題になります。売却価格を下げたり、修理してから再販売したりする必要も出てきます。

売主から見れば、買うかどうか分からない人のために調査を受け入れた結果、物件が売りにくくなる可能性があるわけです。

一方、買主は調査結果を見て、そのまま購入を見送れます。
この売主と買主の利益の違いが、インスペクションが拒否されがちな理由です。

なぜ「結果をフィードバックしない」と伝えるのか

売主から調査の承諾を得るためには、調査内容だけでなく、結果を誰が受け取るのかまで先に決めます。

実務では、売主側へ次のように伝えることがあります。

今回は買主の購入判断のために行う任意調査です。
費用は買主が負担し、建物を壊す調査は行いません。
調査結果は買主限りで利用し、購入を見送る場合も、売主側へ詳細な結果はフィードバックしません。

結果をフィードバックしないのは、売主に欠陥を隠させるためではありません。

買主が自分の費用で調査し、自分が買うかどうかを判断するためです。

売主側に結果を共有しない条件なら、売主は「今回の調査によって新たな不具合を知り、その後の売却に影響する」という懸念を減らせます。

そのため、インスペクションを承諾してもらいやすくなります。

国土交通省のQ&Aでも、買主が依頼した建物状況調査の報告書は買主へ渡され、売主へ渡すかどうかは事前に当事者間で相談するとされています。

買主が依頼した調査結果の取り扱いを確認する

ただし、次の点は分けて考えなければなりません。

  • 売主や売主側仲介が調査に立ち会い、具体的な不具合を認識した
  • 買主が調査結果を使って、修理や値下げを求めた
  • 宅建業法上の建物状況調査として実施した

この場合は、売主側が結果を知らないという前提が崩れます。

買主には二つの選択肢があります。

結果を共有せず、静かに購入を見送るのか。

結果を開示して、修理や価格交渉をするのか。

この判断まで含めて、インスペクション前に決めておく必要があります。

なお、ここでいう任意調査は、買主の購入判断のために専門業者へ依頼する独自調査です。宅建業法上の建物状況調査として実施する場合は、結果概要の提供や重要事項説明の扱いが異なります。

依頼時に、どちらの調査として行うのかを確認してください。

このテーマはYouTubeでも解説しています。動画では、売主へインスペクションを申し入れる際の言い方と、調査結果を誰が受け取るのかを実務目線で説明しています。
『正直不動産』第5話から学ぶインスペクションと売主交渉

買うかどうかは修繕費を含めた総額で決める

リノベーションされていない部分があるから、買ってはいけないわけではありません。

判断の分かれ目は、未改修部分を把握し、購入後の費用として計算できるかどうかです。

工事範囲と修繕履歴を確認でき、追加費用を含めても価格に納得できるなら、築古住宅でも購入候補になります。私は、屋根、外壁、給排水管が定期的にメンテナンスされている建物であれば、築年数だけを理由に外しません。

反対に、床の沈みや漏水跡があるのに追加調査ができない、工事記録がなく価格にも反映されていないという物件は、無理に買う必要はありません。

確認できないリスクを価格に反映できないなら、撤退も正しい購入判断です。

FAQ

Q:リノベーション済み中古住宅なら、すぐに住んでも問題ありませんか?
A:設備や内装が新しくても、配管、床下地、防水、屋根、外壁まで更新されているとは限りません。工事内容一覧と施工写真で、未改修部分を確認してください。

Q:インスペクションで「問題なし」なら欠陥住宅ではありませんか?
A:欠陥がないことの保証ではありません。通常の調査では、床や壁を壊さず、見える範囲を確認します。「調査できなかった部分」が残っていないか、報告書で確認してください。

Q:戸建てのインスペクションはいくらかかりますか?
A:国土交通省は標準的な内容で6万円程度からを目安としています。床下への進入、小屋裏、屋根などを追加すると費用は上がります。10万〜15万円程度を想定し、調査範囲を比較してください。

Q:売主がインスペクションを拒否したら、購入をやめるべきですか?
A:拒否だけで欠陥隠しとは判断できません。ただし、確認できないリスクは買主が負います。調査条件を調整しても承諾されず、価格にも反映されていないなら、購入を見送る判断も必要です。

Q:買主が依頼した調査結果は、売主へ渡す必要がありますか?
A:調査の種類で扱いが変わります。国土交通省Q&Aでは、買主依頼の建物状況調査結果を売主へ渡すかは事前相談とされています。任意調査も含め、実施前に共有範囲を決めてください。

Q:購入を見送る場合、なぜ売主へ調査結果を伝えないのですか?
A:売主側が重大な不具合を知れば、その後の購入希望者への説明や販売価格に影響するため、調査自体を拒否されやすくなるからです。買主の任意調査として結果を買主限りで利用することを事前に合意し、承諾を得やすくします。

まとめ

中古住宅で見るべきなのは、内装の新しさではありません。

工事した範囲、手を付けていない範囲、漏水の発生源、調査できなかった部分を確認し、購入後の修繕費まで含めて判断します。

「リノベーション済み」「インスペクション済み」という言葉ではなく、その根拠となる資料と調査範囲を確認してください。


この記事を書いた人

杉山 広
杉山綜合財務管理株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

不動産会社を経営し、自らも不動産取引を行ってきた経験をもとに、中古住宅を判断する際の実務的な確認ポイントを発信しています。