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民泊・不動産コラム

ペアローンで離婚後どうなるかをプロが解説【正直不動産シーズン1・3話】

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結論から申し上げると、ペアローンは「二人で返せるから安心」ではありません。

離婚すれば、それが地獄行きの入口になる可能性があります。

証券業界16年・不動産会社を経営する立場から言えば、「借りられる額」と「管理できる額」は別物です。今はペアローン×50年ローン×金利上昇という三重のリスクが重なる環境にあり、その差し迫った現実を順番に解説します。

正直不動産3話が描いた「離婚してもローンは残る」

山下智久さん主演のドラマ「正直不動産」シーズン1第3話のテーマは、ペアローンの後始末です。主人公の永瀬がかつてペアローンで販売したマンション、その買い手夫婦が離婚することになり、妻は売りたい、しかし、夫は売りたくないという状況で永瀬のもとに現れます。マンションは夫婦共有名義で、ローンは残っているという状況です。

離婚届を役所に出せば夫婦関係は終わります。しかし銀行との契約は終わりません。これがドラマの核心で、実務でも確かによく起きる話です。

ドラマでは同時進行で、奥さんの年収が高い格差婚の新婚夫婦に、このマンション(離婚夫婦のマンション)を売ろうとする場面が出てきます。しかし、祟りによって嘘がつけなくなった永瀬は、新婚夫婦にペアローンのリスクを全部正直に話してしまいます。

ペアローンの構造と4つのリスク

ペアローンは夫婦それぞれが別々に住宅ローンを組む方法です。たとえば夫が2,500万円・妻が1,500万円を銀行から借り入れ、合計4,000万円の物件を買う。一人では届かない物件が買える点がメリットです。

裏を返すと、夫婦それぞれが借金を個別に背負うことになります。主なリスクは4つ。

① 離婚してもローンは消えない

夫婦関係が終わっても、銀行との契約は全額返済するまで続きます。これは当たり前のように聞こえるが、実際に離婚が目の前に迫ったとき、「ローンも終わるはず」と何故か勘違いする人が驚くほど多い。

② 売却には二人の同意が必要

共有名義の不動産は片方が「売りたくない」と言えば実質、売却できません。正直不動産3話の夫婦も、ここで最初は詰まりました。厳密には、共有不動産の自己の持分のみを売却することは可能ですが、抵当権の問題であったり、他人と1つの不動産を共有することに抵抗感がある人が多く、持分のみの売却は相場より極端に低い値段で叩き売ることになります。

③ 名義変更・借り換えには金融機関の審査が必要

単独名義に切り替えるには、一方が全額を借り換えなければならない。収入によっては審査が通らないケースもある。

④ 連帯保証契約 これが一番厄介になる

 

連帯保証のよくある誤解

ペアローンでは互いに相手のローンの連帯保証人になっていることが多い。

よくある誤解は「相手が返せなくなったときだけ自分に請求(ローン返済肩代わり)が来る」というものです。その認識は確かに正しいですが、実はそれだけではありません。

離婚後、元パートナーが「お金はあるのに払いたくない」と言っている場合を考えましょう。このとき銀行は元パートナーに先にローン返済を請求する義務が、ありません。あなたが毎月自分のローンをきちんと返済していても、銀行はいきなりあなたに「パートナーの借金を返せ」と請求できてしまいます。

「元パートナーはお金を持っているから先に取り立ててくれ」とあなたが抗議しても、法律上通りません。元パートナーが「払わない」と決めた瞬間、その借金はあなたのものになります。

ペアローン×50年ローン「本来買えない物件」まで届いて見える

最近、50年ローンという選択肢が広まってきました。返済期間をこれまでの一般的な35年から50年に延ばすことで、月々の返済額を下げることができます。それがメリットとして紹介されます。

  • ペアローン:借入可能額を増やす仕組み
  • 50年ローン:月々の返済を軽く見せる仕組み

この2つが組み合わさると、本来の予算では届かない価格帯の物件まで手が届いてしまいます。問題は、それが「ローンを完成できるかは別」という点だ。

仮に、月々の支払いが管理できそうに見えたとしても、返済期間が長ければ長いほど、途中で何かが起きたときの逃げ場が無くなります。

金利1%上昇で、35年の総支払いが1,000万円変わる

ペアローン、50年ローン、今後はさらにそこへ金利上昇が加わります。

日本はバブル崩壊後の1995年頃から2025年頃まで、ほぼゼロ金利・超低金利が続きました。

筆者含め、現役世代の多くは金利上昇(+インフレ)を頭では理解していても、体験していません。今、日本は本格的なインフレが続いており、金利は上昇トレンドに入っています。

仮に、変動金利0.6%・借入額5000万円・返済期間35年で、住宅ローンを組んだ場合、月々の返済は約13万円です。
金利が1.6%に上昇すると月々の返済額は約15万5千円になります。差額は約月2万3千円となり、年間では28万円、35年で約1,000万円の負担増となります。

「金利が少し上がっても大した影響ない」は、この具体的な数字に当てはまると決して影響がない、なんてことは無いといえます。

5年ルール・125%ルールはリボ払いと同じ構造

日本の変動金利ローンには、金利が上がっても5年間は返済額が変わらないルール(5年ルール・125%ルール)があります。

安心に見えますが、これは毎月の返済額を変えないだけで、借金の元本は増え続ける仕組みです

分かりやすく言うと、カードのリボ払いと構造が同じです。

問題を先送りしているに過ぎません。

離婚後に「オーバーローンで売れない家」になるとき

ペアローン・離婚・売却の流れで最後に立ちはだかるのが、売却の段階です。

まず前提として、共有名義の物件は片方が「売りたくない」と言えば実質、売れません。ここを乗り越えて夫婦双方が売ることに合意できたとしても、次の問題が出てきます。

売却価格がローンの残債を下回っている場合(オーバーローン)、差額を手元資金から補填しなければ銀行は抵当権を外しません。
抵当権が付いたままの物件を買う人はまずいません。つまり実質売れないことになります。

これは離婚が現実になったとき、当事者の懐事情によっては十分に起きうることです。

実際に私が見てきた事例を紹介します。

物件A:築2年の中古戸建、相場より2割安でもすぐ売れた

新築並みの綺麗さで家主が居住中でありながら売却募集をしていた物件です。家主は自宅購入後ほどなく妻と別居し、夫が一人で一軒家を使っていました。相場より2割近く安く売却募集をしており、コロナ禍にもかかわらず、すぐに売れました。安く売った分、残債の一部は手元資金で補填した可能性が高いと推察しています。

物件B:築浅3年の中古戸建、3年間売れなかった

大手ハウスメーカー製で空き家、中は新築同然の状態で売却募集。しかし価格が非常に高い。残債を返すために中古なのに新築と同等の値段で売り出しており、結局3年間売れ残っていた。その間、家主は毎月のローン返済・固定資産税・諸費用をずっと払い続けていたことになります。

※築浅の中古物件がすべて離婚案件ではありませんが、一定の割合でそういうケースはあります。

ペアローン・50年ローン問題が当てはまる人・当てはまらない人

直接関係する

  • ペアローンを検討している共働き夫婦
  • 50年ローンを組もうとしている人
  • 予算ギリギリの物件を検討している人

関係ない

  • 夫か妻どちらか一方の単独ローンで、返済額に余裕を持たせている人
  • 現金一括購入の人
  • 繰り上げ返済が進んでいる人

 

後者は実に計画的です。

問題は前者が「今の住宅市場では当たり前の選択」として誘導されやすい点にあります。

顧客が限界までローンを組むことは、不動産屋・銀行・建築屋の3者にとって、都合がいい(儲かる)のです。その構造を個人は知っておくべきです。

FAQ

Q:ペアローンを組んだ後に離婚する場合、最善の出口は何ですか?
A:売却価格が残債を上回る(アンダーローン)状態なら、売却して清算するのが最もシンプルです。オーバーローンの場合は一方が借り換えて単独ローンにするか、賃貸に出して返済を続けるかになりますが、どちらも銀行審査と相手の合意が必要で、難易度は高くなります。

Q:夫婦どちらかが死亡した場合、ペアローンの残りはどうなりますか?
A:団体信用生命保険(団信)は夫か妻、どちらか片方が死亡すれば、各自が借りた分にしか適用されないタイプと、片方が死亡すれば両方とものローンが免除されるタイプがあります。ご自身が契約した団信の種類をご確認ください。

Q:50年ローンを変動金利で組んだ場合、金利上昇の影響は35年ローンと比べてどう違いますか?
A:返済期間が長いほど支払利息の総額は膨らみます。5000万円借入の場合、金利1%上昇で35年ローンなら約1,000万円の差ですが、50年ローンではさらに大きくなります。5年ルールで月々の返済額が変わらない間も借金の元本は増えます。

Q:「借りられる額の限界まで借りる」がなぜ危ないのですか?
A:どちらか一方の収入が消えた瞬間に返済が困難となる場合が多いからです。共働きフルローンは、双方の収入が維持される前提で成立しています。病気・失業・育休・離婚といった事態で収入構造が変わると、売ることも借り換えることもできない状態に陥るリスクがあります。

組み合わせによってリスクが跳ね上がる

ペアローンも50年ローンも、単体では便利な選択肢になり得ます。

問題は組み合わせたとき、そして今後の金利上昇が加わると一気に景色が変わるのでご注意ください。

ちなみに筆者は家を買うこと自体を否定する気はありません。インフレが続く局面で不動産を保有することは、資産防衛として合理的な面があるからです。

ただし、「ペアローンで限界まで借りる」は、管理できるリスクの範囲を超えています。どちらか一方の収入が消えても返済が続けられる水準に抑えることは最低限のリスク管理です。

あなたの年収は今は高いかもしれません、しかし、左遷、役職定年、転職などが起きた時に、現在の高い年収を30年後も維持できるでしょうか。

ましてや50年後の年収予測など誰にもできません。

投資の極意はリスク管理です。家を買うには「勢い」が必要ですが、金勘定のときだけはクールに判断することをおすすめいたします。

執筆者
杉山綜合財務管理株式会社
代表取締役 杉山広