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投資・経済コラム

IPOは本当に儲かる?富裕層ほど追わない理由

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IPOは、公開価格で買えて初値で売れれば利益が出やすい投資です。
ただし、富裕層ほどIPOを資産運用の中心に置くべきではありません。

利益の金額が資産全体に対して小さく、良いIPOをもらうには相応の代償があり、小型IPOの一部は関係者の換金イベントに見えるからです。

最近は、SpaceX、OpenAI、Anthropicのような大型未上場企業の名前を聞く機会も増えました。「もし上場前に投資できたら大きいのではないか」と考える人もいるでしょう。

しかし、ここで混同してはいけません。
世界中の投資家が欲しがる超大型の未上場企業と、証券会社経由で個人投資家に回ってくる日本の小型IPOは、同じ「IPO」という言葉で語られていても中身がまったく違います。

IPOで儲かるのは基本的に「公開価格で買えた人」

IPOでよく言われる「当たれば儲かる」は、基本的に公開価格で買えた人の話です。

公開価格、または公募価格とは、IPOで投資家が上場前に株を買う価格です。
初値とは、上場日に市場で最初につく価格です。

公開価格で買い、初値が公開価格を上回れば利益が出ます。
一方で、初値を見てから市場で買う人は、すでに値上がりした価格を払うことになります。
ここを混同すると、IPOの見え方を間違えます。

IPOで儲かった人の話を聞いて、「自分も初値で買えばいい」と考えるのは危険です。
公開価格で買えた人と、初値で飛びつく人は、同じ銘柄を触っていても、まったく別の投資をしています。

このテーマはYouTubeでも話しています。動画では、IPO配分の現場感や、小型IPOを見るときに疑うべきポイントを、より本音ベースで話しています。
IPOが本当に儲かるのかを動画で見る

IPOは「成長企業への入口」とは限らない

IPOはよく「成長企業に早く投資できるチャンス」と言われます。
たしかに、そういうIPOもあります。

上場で資金を集め、研究開発、広告投資、人材採用に使い、事業を伸ばしていく会社もあります。
この場合、IPOは企業の成長資金調達として意味があります。

ただ一方で、創業者、VC(ベンチャーキャピタル)、ストックオプションを持つ役職員にとって、IPOは保有株を現金化する出口でもあります。

投資家から見ると入口でも、関係者から見ると出口。
この視点を持たないと、IPOの実態を見誤ることになります。

さらに、証券会社にとってIPOは手数料ビジネスです。
小型IPOでも主幹事を取れれば、数千万円から1億円超の収益になることがあります。上場後の増資、売出、創業者の資産管理につながる場合もあります。

つまりIPOを見るときは、次の問いが必要です。

  • この会社は本当に上場後も買われ続けるのか
  • 会社に実際いくら資金が入るのか
  • 既存株主はどれだけ売るのか

小型IPOの一部は、成長企業への投資機会というより、関係者の換金イベントを個人投資家が引き受けているように見えることがあります。

上場できる会社と、上場後に投資家が買い続ける会社は違います。

富裕層にとってIPO利益は意外と小さい

富裕層がIPOにこだわりすぎるべきでない理由は、金額感にもあります。良いIPOをもらえたとしても、多くの場合は1単位、2単位。多くても5単位程度ではないでしょうか。

初値で大きく跳ねても、利益は数十万円程度というケースが多いです。
もちろん、数十万円の利益は嬉しいものです。

しかし、資産全体で見ると話は変わります。
たとえば運用資産が1億円ある人が、IPOで30万円儲かったとします。資産全体で見ると0.3%です。

そのために証券会社に新規資金を預ける。
営業担当との関係を気にする。
本当はいらない商品を買う。

こうなってくると、そのIPOは本当に必要なのか、という話になります。
富裕層が見るべきなのは、IPOをもらえるかどうかではありません。
資産全体の利回り、リスク管理、手数料、税金、流動性です。

たまにもらえるIPOで30万円儲かるより、1億円の運用全体を0.5%改善できれば50万円です。
しかも、それは一回きりではなく、毎年効いてくる可能性があります。
富裕層にとってIPOは、当たれば嬉しいおまけ。
資産運用の主役ではありません。

良いIPOをもらうには代償がある

人気IPOは、誰にでも回りません。

証券会社も商売です。
今後も手数料を落としてくれる顧客、取引実績のある顧客、新規資金を入れてくれる顧客に配りたいと考えます。

たとえば、次のような関係です。

  • 数億円を預けている
  • 新規資金を入れてくれる
  • 株だけでなく、投信、債券、仕組債なども買ってくれる
  • 営業担当者との関係が良好

ここで考えるべきなのは、「そのIPOでいくら儲かるか」だけではありません。
そのIPOと引き換えに、自分が何を差し出しているかです。

  • 手数料
  • 不要な商品
  • 新規資金
  • 営業担当との関係性

これらを含めて全体で見たとき、IPOの利益以上に損をしている可能性があります。

誤解を恐れずに言えば、IPOをちょくちょく担当者が持ってくる場合、「自分は上客だから優遇されている」と考える前に、「手数料を落とす客として見られていないか」と疑った方がいい場面もあります。

営業されるIPOほど「なぜ自分に来たのか」を見る

本当に人気のIPOは、営業しなくても欲しい人がいます。
よほどの得意客でなければ、簡単には回ってきません。

逆に、普通に営業が来るIPOは、少し注意して見た方がいいです。
「人気だから自分に来た」のではなく、「売りたいから自分に来た」可能性があります。

特に小型IPOでは、次の項目を確認してください。

  • 売出比率
  • VCの保有状況
  • ロックアップ条件
  • 会社に実際いくら資金が入るか
  • 上場後に買い続ける投資家がいるか

売出比率が高いということは、会社より既存株主にお金が入る割合が大きいということです。
つまり、成長資金の調達より、関係者の換金色が強く見えます。

VCが多く残っているなら、上場後にも売りたい人が残っているということです。

ロックアップが90日や公開価格の1.5倍で解除される条件なら、株価が上がったときに売り圧力が意識されます。

営業されるIPOを見るときは、「この会社は良さそうか」だけでは足りません。
「誰の出口なのか」を見た方がいいです。

初値で買う小型IPOは分が悪い

公開価格で買えないなら、上場後に買えばいい。
そう考える人もいます。

しかし、小型IPOの初値買いはかなり難しい投資です。

本稿では、96utのIPO一覧とJPXの新規上場会社情報をもとに、直近2年の東証グロース小型IPOを見ています。対象は、2024年6月21日から2026年6月21日までのIPOで、IPO時の吸収金額100億円以下、公募価格・初値・現在値が確認できる72銘柄です。
※参照元は、96ut IPO一覧 2024年2025年2026年、およびJPX 新規上場会社情報です。

このうち、初値が公開価格から50%以上上がった銘柄は16社ありました。
その16社すべてが、現在値では初値を下回っています。

さらに、初値から30%以上下落している銘柄が75%。
公開価格すら割っている銘柄も56%ありました。

つまり、初値が跳ねるような小型IPOで儲かる人は、ほぼ公開価格で買えた人だけです。
初値を見てから市場で買った人の多くは、かなり厳しい結果になっています。

小型IPOは吸収金額が小さいため、初値だけ跳ねることがあります。
ただし、それは企業価値が正しく評価されたというより、売り物が少なく買いが多いという需給の問題である場合があります。

上場後は出来高が細り、機関投資家が買わない、または買えない、決算が悪い、あるいは赤字。中長期でみれば株価は低迷を続けるという結果になることが小型IPOの常です。

初値で飛びつくということは、公開価格で買えた人の利益確定を受ける側になる可能性がある、ということです。

ネット証券のIPO抽選は宝くじに近い

ネット証券でIPOに申し込むのは自由です。
コストも低く、当たれば嬉しい。
ただし、人気IPOほど申し込みが殺到し、当選確率はかなり低くなります。
これは資産運用というより、宝くじに近いものです。

やってはいけないとは言いません。
ただ、富裕層が真剣に時間を使う対象としては、優先順位は高くありません。
IPO抽選に時間をかけるより、資産全体の設計を見直す方が、長期的には大きな差になります。

IPOの話が来たときに確認する3つのこと

IPOの話が来たら、次の3つを確認してください。

①そのIPOで期待できる利益は運用資産全体の何%か

30万円の利益は嬉しい。
しかし、運用資産1億円に対しては0.3%です。

その利益が資産全体でどれくらいの意味を持つのかを見てください。

②それをもらうために何を差し出しているか

IPO配分のために、新規資金、不要な商品、手数料、営業担当との関係を差し出していないか。ここを見ないと、IPO単体では勝っていても、運用全体では負けている可能性があります。

③そのIPOは誰のための上場に見えるか

会社の成長資金調達なのか。
既存株主の換金なのか。
証券会社の手数料ビジネスなのか。

IPOを見るときは、「欲しいかどうか」ではなく、「誰のための上場か」を見てください。

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IPOに関するFAQ

Q:IPOは儲からない投資ですか?
A:公開価格で買えれば利益が出ることはあります。ただし、上場後に初値で買う投資とは別物です。特に小型IPOは初値急騰後に株価が沈むケースも多く、追いかける投資には注意が必要です。

Q:富裕層はIPOを狙わない方がいいですか?
A:IPOを完全に避ける必要はありませんが、IPOのもたらす利益額が運用資産全体に対して小さく、配分を得るための犠牲にするコストを考慮すれば割に合わない投資になる場合が多いです。

Q:証券会社からIPOを勧められたらどう見ればいいですか?
A:「なぜ自分に回ってきたのか」を考えるべきです。売出比率、VC保有、ロックアップ、会社に入る資金、上場後に買い続ける投資家がいるかを確認してください。

Q:売出比率が高いIPOは避けるべきですか?
A:売出比率が高いだけで即ダメとは言えません。ただし、会社に入る資金より既存株主に入る資金が多い場合、成長資金調達より換金色が強く見えます。

Q:ネット証券のIPO抽選はやる意味がありますか?
A:当たればラッキーという位置づけでよいと思います。ただし、当選確率は低く、資産運用の戦略とは言いにくいです。時間をかけすぎる対象ではありません。

まとめ

IPOは、当たれば嬉しい投資です。
しかし、富裕層ほどIPOを追いかけるべきではありません。

利益の金額は資産全体から見ると小さく、良いIPOをもらうには代償があります。営業されるIPOには売りたい側の事情があり、上場後の初値買いは分が悪い投資になりやすい。

IPOは追いかけるものではなく、資産運用の中ではおまけです。
ある程度資産がある人ほど、IPOの当選より、資産全体の設計を整える方が長期的には大きな差になります。

この記事を書いた人
杉山 広
杉山綜合財務管理株式会社 代表取締役/宅地建物取引士
証券・不動産・資産管理の実務経験をもとに、生活と資産に関わる判断材料を発信