相続・財産
その時に備えるため、法定後見と公正証書遺言を利用した事例
ご相談者
斎藤さん(仮名) 神奈川県在住
70代
男性
家族構成
夫・妻・子ども2人
POINT
- 法定後見と公正証書遺言を実行
- 子の「行き場」を守る最低限の備えが整い、ひとまずの安心を得た
「まだ大丈夫」と先延ばしにしていた家族の将来
うちには障害のある子どもが二人いて、長男はほとんど身動きができない状態で、次男は少し動けるけれどもやはりサポートが必要な状況です。若い頃は、私も妻も体力的に余裕があって、「そこまで急いで法定後見や施設探しをしなくても、今は何とかなるだろう」と思って先延ばしにしてきました。正直、「今はまだ大丈夫」と、どこかでタカをくくっていたんです。
夫婦ともに病気を経験し、現実を直視するように
でも、妻が15年ほど前に体調を崩してしまい、最初は歩けなくなって、だんだん悪化していったんですね。結果として妻は甲状腺の病気で入院しなきゃいけなくなったんです。私自身も、その数年後に癌になって、3か月ほど入院しました。
不幸中の幸いというか、私も妻も大事には至らず今はぼちぼちの体調で頑張れています。
そのとき感じたことは、一度大きな病気を経験すると「この先、本当に大丈夫か?」という不安が一気に現実味を帯びてきたんです。
それで、改めて考えたわけです。もし私たち夫婦が亡くなったり、長期入院が必要になったりしたら、障害のある子どもたちはどうなるのだろうか、と。
弟が近所に住んでいて甥や姪もいるのですが、あちらにも生活があるし、いつまでも弟が元気でいるとは限りません。
長男の施設入所という一つの区切り
長男は、ほぼ自分では何もできない状態ですから、選択肢がかなり限られます。自宅で介護を続けるのにも限界があって、結局、4年前に綾瀬市の施設に入ってもらうことになりました。タイミングよく作業所の管理者の方から「ちょうど空きがある」と声をかけてもらったので、本当に助かりましたね。施設を探すのは競争率も高く大変だから、こうした声掛けがあるとすぐ飛びつかないといけないんです。そうやって、長男は今施設でお世話になっています。
退職後の居場所確保が難しい現実
次男は、長男と比べるとできることが多いんです。今はグループホームに入って、日中は作業所に通っています。ただ、いずれ年齢を重ねて退職するタイミングが来ると、今いるグループホームにはそのままいられなくなる可能性があるんですね。働いているという前提で入っているホームなので、仕事を辞めたら条件が変わってしまう。そうすると、終身で生活できるような施設を改めて探さなければならない。
でも、あらかじめ「将来はこういう施設に入れます」と確保しておくのは難しいんです。実際に退職するタイミングになってから、空き状況を探して、そこで申し込みをしないといけない。
これは本当に大変だし、不確定要素が多いんですよね。私達夫婦は今は、自分たちのことや、子供たちのサポートは出来るが、数年先は分からない。
もし私や妻が急に倒れてしまったら、長男や次男が行き場を失わないように今から準備はしておきたいんですが、どうにも「将来的に」ってなると具体的に動くのは難しいんです。というのも、「その時になってから考えましょう」と言われることが多くて、行政に相談しても「専門家を探してください」「適切な施設を探してください」という話にしかならない。それで、結局先延ばしにしてきたところがあります。
杉山の一言が大きな転機に
そんな矢先に杉山さんとは昔からの付き合いがあったので、我が家の状況について少し相談したことがあったんですね。で、いよいよきちんと対策なされたほうがいいんじゃないかと、杉山さんから法定後見や公正証書遺言を提案されたのが今回のきっかけです。法定後見人制度については、何となくは知っていたんですが、もうこれはやる段階だろうと思い至りました。
法定後見と公正証書による備え
長男については、法定後見人をつけました。また、私や妻が事故や病気などで万が一のことが起きたときのために、公正証書も作りました。
杉山さんからはこれで完璧というわけではないですが、少なくとも今何もやっていないよりかはお子様たちのレールを敷いておくことが出来るのでやっときましょうと言われ、確かにそうだなと感じた次第です。
杉山さんからは法定後見制度や公正証書遺言の概要について説明を受けて、詳細はプロの司法書士さんを紹介してもらい、それぞれの手続きを行いました。
安心と不安のはざまで
これで、「とりあえず最低限は整えた」という安心感は少しありましたが、実際には不安は尽きないんですよ。法定後見人といっても、やっぱり人間がすることですから、「本当にすべて任せて大丈夫なのか」と思うこともあります。
次男のほうも、いずれは成年後見をつけなきゃいけないだろうし、そういう手続きは避けては通れません。でも、後見人をつけたからといって「はい、これでおしまい。あとは安心」というわけにはいかないですよね。
横領や不正など、世間で耳にするようなトラブルが起きないとも限らない。自分で判断が難しい子どもを守るために用意された制度ではあるのに、そこを突かれたらと思うと、複雑な気持ちになります。 私たち夫婦が完全に安心できる状況なんて、正直ないんだと思います。
でも、どこかに「子どもの行き先がちゃんと確保できたら、一旦は落ち着けるだろう」という気持ちもあります。長男の場合、今は幸いにして場所が決まっていますから、そこは少しは気持ちが楽になりました。
同じ悩みを持つ方へ一言
本当に、同じように障害のあるお子さんをお持ちの方々に伝えたいのは、「後回しにしないほうがいい」ということです。私も妻も、自分たちの体が元気なうちは「大丈夫だろう」と思いがちでした。でも、いざ大病をしたり、介護が必要になったりすると、とたんに生活が立ち行かなくなる。そこで初めて焦って調べようとしても、どこに相談したらいいかわからない、施設は空きがない、手続きは煩雑だ…と、なかなかスムーズにいきません。
私自身、今は「次男が退職したあとの施設探し」「次男の成年後見の準備」「もし入院したらどうするか」と、やるべきことや悩みはまだまだ尽きません。でも、ひとつずつ向き合いながら進めていくしかないんです。
同じ境遇の方がいらっしゃるなら、ぜひ早め早めに動いてほしいというのが私の本音ですね。もちろん、心配がゼロになるわけではありませんが、いくぶんかは自分たちも心穏やかに過ごせるようになりますからね。
担当コンサルタント
証券会社にて個人顧客を中心に資産運用コンサルティングを行い、2015年にウェルス・マネジメントアドバイザーとして独立。 自ら証券投資、不動産投資、民泊運営を実践しています。ウェルス・マネジメント研究所では、投資に関する情報発信を主軸に、「判断を誤らないための知識と視点」を提供しています。投資判断を支える情報発信をする中で、より個別具体的な整理が必要な場合に限り、 その延長線上で個別コンサルティングを行っています。
1985年生まれ。大阪府出身、横浜市在住。趣味はサーフィン。