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投資・経済コラム

moomoo証券の不祥事から考える証券会社の選び方

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【著者】杉山 広|杉山綜合財務管理株式会社 代表取締役/宅地建物取引士
杉山のプロフィール 会社概要

moomoo証券の不祥事は、単なる一社のミスで片づける話ではありません。
結局問われているのは、証券会社を手数料やアプリの使いやすさで選んでいいのか、という問題です。結論から言えば、証券会社は「増やす場所」である前に「預ける場所」です。だから最優先は安全性、その次が補償やサポートで、利便性や手数料は最後に見るべきです。

moomoo証券の件で何が問題だったのか

2026年6月5日、証券取引等監視委員会はmoomoo証券に対して行政処分を求める勧告を出しました。公式資料で確認できる問題は、NISA対象外の商品を対象であるかのように表示していたことだけではありません。

監視委の公表によると、2025年2月21日から5月27日までの間、少なくとも77銘柄の米国ETF・ETNについて、NISAの対象外要件等に該当するにもかかわらず、対象商品であるかのように表示して販売していました。その結果、59顧客が25銘柄をNISA口座で売買しています。さらに、販売停止後も実効性ある改善策を作らなかったため、2025年11月19日から2026年1月14日までの間、別の1銘柄でも同様の問題が再発していました。2026年7月2日時点で、私が確認できた一次情報はこの「勧告」までです。

しかも本当に重いのはそこから先です。顧客への是正対応は著しく杜撰と指摘され、年間投資枠の是正でも顧客ごとに対応差が出ていました。国内株や投信の出庫申請を一律で受け付けない運用も問題視されています。さらに、口座開設を謝絶した顧客など少なくとも延べ1,531件について、疑わしい取引の該当性を検討・判断していなかったことも認定されました。

要するに、NISAの誤表示は入口であって、本丸は経営管理態勢と内部管理態勢の弱さです。

この事件を「NISAミス」で終わらせると判断を間違える

このテーマはYouTubeでも解説しています。動画では、記事では省略した話し方のニュアンスや、証券会社の対応力をどう見抜くかを実例ベースで補足しています。
moomoo証券の不祥事から考える 証券会社の選び方|NISA誤表示・移管回避

多くの個人投資家は、証券会社を選ぶときに入口ばかり見ます。手数料が安い、アプリが使いやすい、ポイントがつく、キャンペーンが派手。もちろん、これらは無視できません。ただ、金融サービスの本当の差は、平時ではなく有事に出ます。

証券業界で個人向け資産運用の現場を16年見てきた立場から言うと、トラブルが起きたときに人間がきちんと対応するか、移管や出庫にちゃんと応じるか、補償や説明が曖昧ではないか、こういう地味な部分に会社の本質が出ます。

普段は便利に見える会社でも、問題が起きた瞬間に「フォームから問い合わせてください」「確認に時間がかかります」「その対応はできません」で終わることは珍しくありません。
今回のmoomoo証券の件は、まさにそこを行政に突かれた事案です。

このニュースを見て「また新興ネット証券がミスした」で終えるのではなく、「自分は証券会社を何で選んでいるのか」と考え直した方が価値があります。

証券会社選びで見るべき順番は3つしかない

1. まず安全性

お金の預け先として見たとき、最優先すべきなのは安全性です。ここでいう安全性は、単に会社の規模感だけではありません。法令順守の姿勢、内部管理、システム管理、顧客資産を扱う覚悟まで含みます。

実際、金融庁のNISA資料でも、成長投資枠は年間240万円、非課税保有限度額は総枠で1,800万円です。NISAは「少額投資」という名前でも、制度としてはかなり大きなお金が乗る設計です。そうである以上、対象商品の登録や税制実務を雑に扱う会社とは相性が悪い。ここはかなりはっきり言えます。

2. 次に補償とサポート

何かあったときにどう守るのか。ここが曖昧な会社に大金は置きづらい、という感覚は正しいです。

この点で思い出すべきなのが、2025年春のネット証券の大量不正アクセス問題です。当時はフィッシング由来の不正ログイン・不正売買が相次ぎ、4月末時点ベースで約1,450件、売却約506億円、買付約448億円、合計約954億円規模まで拡大しました。当初大手ネット証券の補償姿勢はかなり顧客の自己責任寄りで、世論の批判を受けてから「個別事情を見て一定補償」に修正された流れでした。

理屈としては、基幹システムが破られたのではなく、認証情報が盗まれたのだから利用者側にも落ち度はある、という話は分かります。ただ、利用者から見れば、平時は安くて便利でも、有事になると補償もサポートも急に曖昧になるのでは困るわけです。ここがネット証券の弱点として露出した事件でした。

3. 利便性と手数料は最後

手数料やUIを軽視しろと言っているわけではありません。むしろネット証券の強みはここにあります。ただ、順番を間違えると危ないという話です。

安全性もサポートも弱いのに、安いから選ぶ。これは結局あとで高くつくことがあります。今回のmoomoo証券の件を見ても、入口の派手さより、出口の弱さのほうが問題でした。便利さは最後に比較すれば十分です。

では、対面型とネット証券はどう使い分けるべきか

ここで極端に「対面型が正義」「ネット証券は危険」と言い切るつもりはありません。
私ならば、利用する証券口座を2つに分けます。

長期で置く資産、あまり頻繁に動かさない資産、運用金額が大きい資産は、対面型や大手証券で運用します。

一方で、コストを抑えたい、機動的に売買したい、商品比較をしたいというニーズでは、ネット証券の強みは明確です。

つまり、運用資産の全て1つの証券口座に置かず、生活インフラとしての口座と運用ツールとしての口座を分ける。この発想が現実的です。

ちなみに、証券口座は3つも4つも要りません。対面型1つ、ネット1つで十分です。

この話が当てはまる人と、そうでない人

この話が強く当てはまるのは、50代以上の準富裕層、不動産オーナー、中小企業経営者、医師などの忙しい専門職、そして長期投資で毎日細かくチェックしない人です。こういう人は「何を買うか」と同じくらい「どこに置くか」が重要になります。
逆に、短期売買中心で、少額を機動的に回したい人は、手数料や操作性の優先順位が高くなっても不自然ではありません。全員に同じ基準を当てる必要はありません。ただ、運用額が大きく、頻繁に見ない人が、若いトレーダーと同じ基準で証券会社を選ぶのはズレています。

FAQ 出典

Q. moomoo証券の問題はNISAの表示ミスだけだったのですか?

違います。監視委の勧告では、誤表示だけでなく、顧客対応の杜撰さ、出庫・移管対応の不備、疑わしい取引の未判定、システムリスク管理の不十分さまで指摘されています。

Q. ネット証券は使わない方がいいのですか?

そうではありません。ネット証券はコストや利便性で優位です。ただし、長期で大きなお金を全部置く先として見るなら、安全性・補償・サポートを別で評価すべきです。

Q. 証券会社を見直すとき、最初に何を確認すべきですか?

手数料表より先に、トラブル時の対応、出庫・移管の実務、法令順守や行政対応の履歴を確認することです。そこで違和感がある会社は、預け先として慎重に見た方がいいです。

結局、証券会社選びで分かれ目になるのは「安いか」ではなく「問題が起きたときに守ってくれるか」です。moomoo証券の件は、その順番を取り違えると何が起きるかをかなりはっきり見せた事件でした。便利さや手数料は大事です。ただ、それは安全性と補償を確認したあとで十分です。

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